壺中美人       横溝 正史


角川文庫

壺中美人
変わり者の画家井川謙造がアトリエで殺された。ベッドの枕元には青磁の壺がおいてあり、壺の中にはみずみずしい薔薇の切り花がいけてある。アトリエは母屋に通ずるドアをしめて鍵をかければ完全にオフ・リミット。井川は妻とは別居中で、相当のいろ好み、とっかえひっかえ女を引っ張り込んでいた。
母屋にいたのはお手伝いのばあさん、宮武たけだった。彼女は事件の夜、母屋に寝ていたが、夜半アトリエの中をおそるおそる鍵穴から覗くと、大きな黒眼鏡をかけた支那服の女が血塗れのパレットナイフを手に持って立っていた、しかもその女は青磁の壺の中に入ろうとしていた…・。別居中の妻マリ子が登場、彼女は井川から虐待を受けており、離婚協議中だったと判明する。
支那の曲芸・壺中美人。
主役は壺に入り込む楊華嬢、そして芸を解説し、その他の芸を行う楊祭典。ところが井川は楊祭典に曲芸に使う壺をしきりに買いたがり、ついに一つを得たという。それがあの青磁の壺だ。やがて支那服の女が薔薇を買っていたこと、井川が楊華嬢をねらっていたらしいことが判明してくる。
事件を前後して楊華嬢の行方がわからなくなった。楊華嬢はどこに…・。そして犯人は本当に楊華嬢なのだろうか?金田一耕助の推理が冴える。
殺害現場をみせ、関係ない人間を犯人と思わせたり、自分のアリバイを作るテクニックは推理小説ではよく使われるがこれもその一例。壺に入ってしまう曲芸と絡み合わせているところが面白い。

廃園の鬼
那須に、抜け穴があったり、ばかでかい塀があったり、展望台が合ったりする風変わりな化け物屋敷が立っていた。今はS大学教授だった高柳慎吾先生、その奥さんので元レコード歌手の朝倉加寿子、その友人の佐竹恵子などが住んでいる。
金田一耕助と共に加寿子の最初の夫だった映画監督のロケーション隊がやってきて、この建物を一望するホテルに陣取った。
翌朝9時ころ、化け物屋敷の展望台の上で、男と女が争う様子、そのうち男が女をかつぎあげ地上に落としてしまった。あわてて駆けつけると朝倉加寿子の死体、しかし金田一耕助は展望台とくらべて加寿子の死体の位置が少しおかしいと感じた。
壺中美人とトリックとしてはかなりにている。
020219