暗闇坂の人喰いの木      島田 荘司


講談社文庫

 私は売れぬ推理作家。私のファンという森真理子の不倫相手、藤並卓が、嵐の去った朝、自宅屋根の稜線にまたがるようにして死んでいるのが発見された。自宅は、横浜市西区西戸部町の民家で、脇をかってはさらし首がさらされたという暗闇坂が通り、藤並家との境には樹齢2千年という巨大な楠がたっている。その大楠は人間を飲み込み、人を狂気に駆り立てるという。
 私とあの高慢な探偵御手洗が藤並家を訪ねると、卓の母八千代もまた嵐に晩に外に出て楠のたもとで傷を負って倒れていたそうだ。その高台の土地には、かってガラス工場があったが、戦前イギリスから来たジェイムズ・ペインと妻の藤並八千代が購入し、外国人相手の学校を経営し始めた。二人は卓、譲、玲於奈の三人の子を儲けたが、昭和45年に離婚、八千代は49年に現在の夫照男と再婚、美幸を儲け、現在に至っている。広い土地は分割され、現在はマンションと廃業した風呂屋、それに駐車場になっている。
御手洗が、屋根の上の鶏が奏でていたメロデイの暗号を解き、大楠を破ると4体の女の子の白骨死体が出てきた。ペインの使っていた書斎を調べると日記、沢山の日本人形の首等が出てきた。日記の端に可愛い女の子を殺して壁に塗り込めたというスコットランドの「巨人の家」の物語が書きつけられていた。これらの事実をもとに、御手洗は私、玲於奈をつれて、スコットランドのインバネスを訪れ、問題の家を調査する。やがて壁から女の子の骨が見つかる。
 再び、藤並家に同じような事件が起こった。嵐の後、次男の譲が楠に突っ込んで死に、病院から抜け出した八千代がまた楠の根本に倒れていた。謙はワープロに遺書らしきものを残している。やがて八千代が死ぬと、御手洗はふたたびピッケルをふるって楠に襲いかかる。中からまた楠が現れた。ペインは楠をおおう楠を作っていたのだ。ところが藤並邸から出火し、お手伝いに来ていた老夫婦が死ぬと、御手洗は突如事件をおりてしまった。事件は中途半端なまま人々から忘れられてしまった。
それから2年後。すべてが取り壊されるときになって、玲於奈の要請で御手洗がついに真相を語る。ペインの地下の研究室、実際の女の子の皮膚を使った4体の日本人形、妻による二重性格者の夫殺し、血の遺伝をおそれた妻の子殺し・・・・。
本格推理らしくトリック(滑車でつり上げる死体、振り子で放り投げる死体、ひっくり返った家など)、暗号(楽譜)などがふんだん、話のホラー度?抜群(木が人を食べる!)など、興味ある話しがいっぱい。話しのスケールが大きく、時を替え、場面を変え、文体を替え非常に工夫されている点も素晴らしい。
・死刑執行のやり方(281p)
・人間の頭部の保存の仕方(580p)
・動脈と静脈がすべてきれいに残って標本化される・・・水銀の注入(583p)
・遺伝に関しては、人間の空想がまだいくらでも許されるのです。(637p)
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