光文社文庫
キャサリン、浜口一郎コンビによる推理短編集。いづれも本格的だが、京都堀川陣屋の殺人が一番凝っているように思った。
女富豪密室殺人
高級マンションの301号室に住み、隣り合った302号室を客間として使っている女富豪小川加代が刺殺された。テラス側はすべてロックされており、廊下に面した301号室ドアは内開きでかんぬき付、これも閉められていた。302号室ドアは閉め切りで前には冷房器が置かれてある。二つの部屋の境のドアは自動鍵式で301号室のみからあけることが出来る。容疑者は甥、姪、秘書、お手伝いだが、犯人はどのようにして301号室に入り込み、犯行後脱出したのだろうか。
実は302号室ドアは外開きで、密かに鍵を手に入れた犯人が、冷房器をまたいで室内に入り込み、302号室洗面の水を流して、不審に思った被害者をおびき寄せ殺害、死体を301号室に放置し、境のドアを閉め、302号室廊下側より脱出したものだった。
京都堀川陣屋の殺人
堀川陣屋と言うのは二条城近くにある忍者屋敷で、多くのからくりがしつらえてある。その一行は、一階から二階にあがり、一通り見終わった後、解散になったが、一人の女性が吊り階段が気になりもどったところ、吊り階段の下に女絞殺死体を発見した。実は女性は二階の舟形床で殺されたのだが、案内人が吊り階段をおろし、舟形床をずらし、階段から登れるように板戸を引き上げた。そのため死体は舟形床から階段をゆっくり落ちてきたため、最初はなかった死体が現れた、と言うのだ。
この作品はもう一つ犯人のアリバイ作りが傑作だ。犯人は大坂から名古屋に行った証拠に車内の様子や大阪で薔薇の花を贈られ、それで子供が押し花を作った話などを聞かせて信用させる。しかし贈られた薔薇と押し花に使った薔薇の種類が違ったため、別に小型テレコを仕込んだ薔薇の花束を用意し、それを網棚に放置したことが発覚してしまう。
特急列車は死を乗せて
京都駅を出たひかり号の中で、男が突然苦しみ出し、絶命した。死の間際に彼はカミオカと言っている。カミオカとは一体何か!その後の調べで、彼は製薬会社に勤務しており、カプセルに入った青酸性毒物を嚥下したらしい。容疑者は恋人の中川光江、上司の梶岡、友人の北村和夫、叔父の蜜井金造等。
カミオカが実は株の名前の符牒で所在地から来ており、三井金属の事だったとはね。ダイコンが大日本コンクリート、アカデンワが田村電機、オイランが吉原製油、オカルが日本軽金属等本当かなあ?
高瀬川旅情の死
イチローは、木屋町の料亭で、旧友で不動産会社社長をやっている野宮と酒を酌み交わしていたが、ふと野宮は席をたった。そしてしばらくして同行した秘書の中西が、高瀬川で毒物死体となった野宮を発見した。不動産会社社長、スナック経営者などが容疑者としてあがるが、キャサリンはむしろ中西と野宮の妻に注目する。中西は犯行時刻に目の前にいたし、少し前に東京にいるはずの野宮の妻に電話をかけていたようだから二人のアリバイは鉄壁に見えた。しかしキャサリンは腕時計の音を、受話器に聞かせて電話し、その後東京ダイヤルをまわして偽装するトリックを見破った。
新聞広告の殺人
新聞広告で「カメラを忘れた方、預かっていますので取りに来てください。失礼だと思いましたが、カメラに入っていたフィルムを現像してみました。」と呼びかけた男が殺された。実は不倫関係で都合が悪くなり殺した女の写真が映っていたのだ!キャサリンのアリバイ崩しが面白い。被害者は野鳥観察の会に入っており、留守番電話にはコジュケイの声とカワラヒワの声が聞こえ、背後に鉄筋パイルを打ち込んでいる音が聞こえた。この条件から犯人の所在地を推定したのである。
京都・十二単衣殺人事件
五月葵祭りのころ、一人暮らしの女子大生が「ジュウニヒトエの男」なるダイイングメッセージを残して殺された。容疑者は大学教授など数人。しかし続いて起こった第二の女子大生殺害事件の現場に咲いた紫色の濃淡の花から犯人が割れた。
001020