マリオネットの罠       赤川次郎


文春文庫

 フランス文学専攻の上田修三は、教授の仲介で森の中の豪邸に住む峯岸紀子・芳子姉妹に、破格の好条件で、家庭教師となり、フランス語を教え始める。しかし何となく刑事が様子を探りに来るなど屋敷内のおかしな雰囲気に気づき、そっと調査を行うと、地下の牢獄に妹の雅子が閉じこめられていた。彼女の説明によると、「私のことを飛行機事故で死んだ父は「脆い、脆いガラスの人形」と言った。現実と夢想が区別が出来なく成ってしまう。姉たちはそれを知り、私を襲った下男を殺した上、私をここに閉じこめてしまった。」
 話を信じた上田は、牢獄の合い鍵を作り逃がしてやる。しかし階段から転落し気がついた時は知らぬ病院の中。見上げると姉の紀子がたっていた。「とんでもないことをしてくれた。あの子は危険、妹と女中と運転手を殺して逃げた。あなたは両足を折っている、ここでしばらく治療しなければならない」
 一方町では、弁護士、医者などが次々出会ったばかりの若い女性に同じ模様のナイフで刺し殺されていった。何の目的で、誰が、捜査陣は手がかりすら掴めない。
 また牧美奈子は、突然の婚約者上田修三失踪に困惑する。警視庁のらつわん刑事上西は、彼女に「ある刺激剤を輸入して日本の上流階級にばらまいている途方もない組織を追求している。峯岸一家は日本側の中心で、上田修三は彼らが経営する精神病院に捉えられているらしい。」と告げる。そこで美奈子は志願して、病院に患者として侵入する。
 新薬試験で患者が殺される現場を目撃した彼女は、紀子等に発見され、危機一髪。しかし発信器で駆けつけた捜査陣に救われ、組織の全容も明らかになる。こうして事件が一件落着し、修三と美奈子の結婚式が関係者を集めてはでやかに行われようとしていた。
 地下の牢獄から逃げた雅子は、最後の一勝負を賭けようとしていた。私を犯した「先生と呼ばれる」男たちへの復讐は終わった。後は愛する修三を殺して自分も死のう!一方上西刑事は、野放しの雅子がどうでるかと警戒を怠らない一方、雅子を動かしている陰の人物を密かに追い求める。

 巻末権田萬治の解説に「不気味な恐怖の世界、フランス・ミステリーの味わいのあるサスペンス豊かな世界がそこに生々しく描き出されている。」とあるが、その通りで現実性はともかくしゃれた作品。目的の分からぬ無差別殺人は「黒衣の花嫁」(ウールリッチ)を思い起こさせ、結婚式に新郎を襲う最後は「スナーク狩り」(宮部みゆき)にヒントを与えたのかも知れないと思った。
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