明治九年の謀略        舞岡 淳


カッパ・ノベルス

明治九年、静岡で、「山王御霊会」という奇妙な一団が降霊術により衆生を救うと称し、下級武士等の妻妾から金を巻き上げ始めた。大槻彦四郎というかっての同心が信じず、無理矢理一人で降霊術を受けるが密室の中で白羽の矢を心臓に打ち込まれて死んでしまった。一団はその事件が発端でいずこともなく立ち去ったが、今度は銀座煉瓦街に「有偽図倶楽部」なるものが出現、透視術を種に同じようなことを始めた。勝海舟は日本で始めての私立探偵社を使い、彼らの真意をさぐる。
中心は元会津藩神保新十郎で江戸に養子に出され片岡となった男と判明、同人は、若者と三人の侍くずれが争っていたところを助けた縁で、奇術師松井源水の一団に加わって異国を体験したが後に姿をくらました。あの山王御霊会の密室殺人事件は鏡を使ったトリックでだましたものらしい。
新十郎が調べると、彼が外国にいっている間に戊辰戦争が起こり、会津藩は壊滅、青森の僻地斗南藩預けとなった。神保一家もほとんど死に絶え、唯一残った兄も赤目源之進等に脱走のぬれぎぬを着せられ殺されたことが分かった。明治4年、新十郎は御一新で弾正台に勤めていた赤目源之進を発見、参議広沢暗殺されたおなじ日に惨殺した。自分をこのような境遇に陥れ、のさばっている薩摩長州を戦わせ、一泡吹かせようと決心した。
「有偽図倶楽部」に注目した男がもう一人いた。日本の警察機構を作った大警視川路利良である。彼は、新十郎等が反政府組織と繋がっていることを恐れた。そのとおりで新十郎は元会津藩士永岡久茂のために資金集めをしていたのだ。
やがて永岡久茂が萩の前原一誠、筑前の旧秋月藩士、熊本の神風連等と共にたつが、頼みの西郷隆盛はたたず、ことごとくつぶされてしまう。身の危険を感じた新十郎等は川越に逃れる。途中、永岡の元に通いながら裏切った川路の密偵二人を切った。
やがて新十郎等は骨董屋を始める。しばらくしてその骨董屋を勝が訪れた。同じ頃、川路も新十郎の隠れ家に気づいたらしい。

明治初期の雰囲気を非常に良く伝えている作品であると思う。山田風太郎の「警視庁草紙」を思い出した。他に泡坂妻夫「11枚のトランプ」、司馬遼太郎「翔ぶが如く」などもこの書に関連している。面白い。読んで良かったと思った。
難点をつけるとすれば、今一歩一気に読ませる迫力が何か駆けている。読者が興奮するためには、謎がつぎつぎに提起されたり、巨悪が存在しそれになんとしても立ち向かわなければならない状況が設定されなければいけないのではないか。その点この作品は、途中である程度「先が読めてしまう。」それに主人公のニヒリストぶりもやや甘く、共感しにくいところも見受けられる。勝海舟もなぜわざわざ薩摩の剣士を呼んできて新十郎と戦わせる、などしたのだろう。
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