迷宮の扉             横溝 正史


角川文庫

迷宮の扉
観音岬燈台近くの竜神館には、主の東海林日奈児、後見人降矢木一馬、家庭教師小坂早苗、じいやが住む。彼らは毎年やって来る日奈児の誕生日の使者を待っていたが、嵐の中を行き場を失った金田一耕助が飛び込んできた。遅れた死者は何者かに襲われて射殺され、おいかけた飼い犬の隼も撃たれたがなぜかコバルト色の髪の毛を加えている…・なんともゾクゾクするような出だしである。
降矢木の口から実は日奈児はシャム双生児の片割れで、もう一方の片割れがいることが分かる。その片割れ月奈児は後見人で一馬の妻、しかし徹底的に憎み合っている五百子、家庭教師の緒方一彦、家政婦の山本安江と共に房総半島の突端、洲崎燈台近くの海神館に住んでいる。降矢木の使者として金田一が海神館を訪ねた直後、海神館が焼失、二つの館に住んでいた者が一度に姿を消してしまう。
金田一が等々力警部の協力で探し当てたグループの行き先は中央線吉祥寺にある双玉荘というこれまた一風変わった建物である。バンガロー風の平屋の両翼にそっくり同じ形をした二階建て洋館が連なり、そこにあの二組が相対峙して住む。中央には癌で瀕死の床にある双子の父親東海林竜太郎、彼の部下の立花勝哉、執事の恩田平造、看護婦の加納美奈子、使用人で猿のような小男虎若虎蔵が住んでいる。最初に撃たれた男は郷田啓三で、竜太郎の忠実な部下だった。
一週間ほどして竜太郎が他界し、遺言状が公開されるがなんと日奈児と月奈児を互いに殺し合え、というような内容、しかも二人死んだら全財産は加納美奈子のものになると言うのである。なぜ加納美奈子の名前が出てくるのか。
日奈児、月奈児相次いで怪死する。さらに竜太郎のおい酒井圭介、姪の古坂綾子の存在と全員が亡くなった場合、彼らに相続権があることが判明する。しかしその片割れ酒井も殺されてしまう。財産奪取をねらう男女ペアの思惑と、愛する部下を殺された男の犯人追求欲、それらが複雑に絡み合った殺人劇は金田一の名推理によって急転、解決に向かってゆく!
三つの風変わりな建物、鍵のトリック、連続殺人、、クライマックス、思いもかけぬどんでん返しなどが読者をワクワクドキドキさせる。まさに少年少女むけの本格推理小説ということができよう。
片耳の男
井の頭公園で片耳の男に襲われた美少女鮎沢由美子を、宇佐見慎介が救った。彼女の元には毎年8月17日おとぎ話の贈り物と称し、何ものかが高価なプレゼントを贈ってくる。それが今年は「雑司ヶ谷の七星荘を訪ねてほしい。悪いことにはなりませんから。」しかし訪れたとき、贈り主は亡くなったばかりだった。老下男の話によると「あなたのお父さんは、昔千島で砂金採掘事業をし、成功したが、船が沈んで亡くなった。亡くなった男は一緒に働いていた者で、あなたに宝の在処を教えようとしていたのです。」
宇佐見と由美子の宝探しが始まる。少年少女向けだが、コナン・ドイルの「4人の署名」を彷彿させる作品である。
動かぬ時計
毎年5月15日には不思議な贈り物が眉子のもとに届く。父の六造は「好意は受けておけ。」という。今年は高価な金の時計だった。その時計が八月になって動かなくなった。裏蓋をあけると見知らぬ夫人の写真が張り付けて合った。片耳の男に比べ、少女向けという感じだがアイデアは同じである。
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