密室感染 志賀 貢


光文社文庫

作者の作品を読むのも三作めか四作めになるが、全体的には
(1)専門的な医学知識を取り上げ、わかりやすく解説していると言う点では群を抜いている。(2)読者を喜ばせる為か、濃厚なエロ場面が豊富(3)トリックは普通(4)文章はうまいが、人の心の描写も今一歩
と言うのが私の偽らざる感じ。

この作品婚約中の医師、立原と女医の中津川沙夏が、二人を引き合わせてくれた帯広の病院長谷広を訪問し、熱気球に乗せてもらう歓待を受けるうちに、日高山中で白骨化した女性首無死体が発見された事を知る話から始まる。
この事件を捜査一課が、弁護士で医者の朝比奈博士の元に相談に来る。杉山という女の「殺されかかっている。」の電話がかかる。さらに谷広から院内感染が発生し訴えられかかっているとの相談が来る。葛西の人工なぎさで看護婦の川西という女性の水死体が上がる。川西の過去の調査が始まる。令奈というファッションヘルスの女が隣室の坂下が失踪したとの相談に来る。立原病院での院内感染の発生・・・。首無死体の頭が確認され吉川なるアメリカ留学をしようとしていた看護婦と分かる。
真相は沙夏の置き手紙によれば沙夏は実は偽医者、向川という患者が吉川を殺し、沙夏は彼女に成りすまし、病院を転々としていた。なぜ、向山が彼女の為に首無し死体をつくってまで便宜を計ってやったかははっきりしない。彼女の本名は坂下。向川は川西にも手を出したが、彼女は自殺した。向川は事故で死んだというもの。
最後に逃げ出した沙夏が、雪の原野で行き倒れになっているところを発見され、立花が駆けつける・・・・。ロマンテイックなエンデイングに見えるが真相がはっきりしないところが弱い。院内感染は沙夏の誤った治療方法によるとされている。

院内感染、偽医師の二つの医療に関するテーマを取り上げているところは面白いと思った。避妊用リングについての話(44p)、角膜の混濁具合から死亡推定時刻を考えるくだり(92p)、クレゾール石鹸液と逆性石鹸についての解説(168p)、カテーテルの無菌捜査(173p)などもさすがと思った。