ハヤカワ・ミステリ文庫
作者のあとがき:私立探偵が、依頼を受けて。それまで全く知らなかった、なんの関係もなかった人間関係の中に、突然、登場する。そして、そこから最後まで、その事件に拘わることがらすべてを見てしまう。私はこのような強い性質を持たされた主人公である私立探偵を、無色透明、無味無臭のような存在として、ぼくは描いて見たかった。
主役のアーロン・マッケルウエイは21才カリフォルニアに住む私立探偵、世界観などを語らず、事件を特定の方向に引っ張って行くこともせず、タフ・ガイでもなく、妙な癖もない、そんな人間である。だから事件は型どおりの終わり方などするわけがない。それがカリフォルニアの晴れた空気と相まってこの短編集の魅力となっている。
情景描写がうまく洒落ていてセンスのある都会的な文章を書く作家だと思った。完全な作り物ではあるが・・・。
ハンバーガーの土曜日
セシールからの依頼「私の二つ違いの姉が自殺したのよ。小さな紙っきれを残していたのよ。マイケルに、さようならを伝えて・・・。それがあなたに頼みたい仕事なの。」
マイケルという男のフルネームと電話番号が、すぐに分かった。電話をすると、女の声、彼女はパメラと名乗り、こちらの真意を確かめようと必死。約束の時間に行くと、すぐに車を出し、サマータイムの町に。指定する交差点近くの歩道脇に車をとめると、交差点の向こうからクリーム色のダッジがゆっくり走ってきて、手前五十メートルくらいで止まった。男が二人おりてきた。濃い色の髪の方がマイケルだという。「よせ、彼らをとめるんだ。」と叫ぶが、階段を登る彼らには届かない。銀行強盗をしようとしていたのだ!
旅男たちの唄
プリシラ・オーバックからの依頼「私の恋人だったデイッキー・ブライアントピストルで撃たれて死んだ。彼の「フル・ムーンのたびに」という歌は、いま、大ヒットしている。どんな状況で、どのようにしてその大ヒットを作詞作曲したかを、できるだけ詳しくあなたに調べていただきたいの。」
デイッキーと意気投合したジーンは、恋人のダグラスと諍いを起こした。「この歳で俺と別れて、この先いいとがあると思うのかってダグラスが言ったから、私は言ってやったの。フル・ムーンのたびに新しい愛をみつけるわよ。」会話をデイッキーが聞いていて「歌にする。」ことを申し出た。メロデイはたやすくに作られた。それが大ヒットになった。しかし「恋人に好みの範囲の中だけで、適当におもちゃにされた」女性が、恋人と誤ってデイッキーを撃ち殺してしまった。「フル・ムーンのたびに」をリクエストした私におばさんウエイトレスが言う。「ルーザー(負け犬)の歌を聞くのにおカネを使うなんて、まるっきり無駄づかいだと、私は思うのよ。」
ミス・リグビーの幸福
ミス・リグビーからの依頼「私と同じように離婚経験があり、秘書をしているエレン・B・グリーンという女性が、自宅でピストル自殺した。彼女が自殺した理由を調べて頂きたい。」
エレンは33才、重役秘書、仕事は有能、男っ気無し。通っているアスレテイック・クラブのサンデイによると、彼女はものすごくハードなトレーニングをこなし、素晴らしい肉体を持っているそうだ。サンデイと食事をすると、彼女はミス・リグビーの事を聞き出した。そして溌剌としていない、と聞くと「ミス・リグビーに、いま、電話しなさい。人が体をきたえるトレーニングの指導をしていると、人のことが良く分かるようになるのよ。」あわてて電話をすると、救急車で運ばれたばかりだった。自殺未遂!
ダブル・トラブル
トラック・ドライバージャック・ローウエルからの依頼「見つけて欲しいんだ。ステラ、という名前だけしか知らない。しかも、一度寝ただけなんだ。ステラが本名かどうか分からない。」
たまり場ブームタウンを中心に地道な聞き込み調査を続け、ついに彼女について知っていると言う女性たちに遭遇。彼女たちは、カリフェルニア州警察のもので売春マフィアをおっているという。ところが連れて行かれたところが、砂漠の中の廃棄された小さな飛行場。男たちがたむろしており、マフィアの本部のようだ。そこにステラがおり、アーロンはセックスを強制される。危機一髪!
探偵アムステルダム、最後の条件
サニー・レッドモンドからの依頼「あるメッセージを3人の人間にどうしても伝えて欲しい。」メッセージの内容は「あなたたちはおたがいに相手を真剣にあいしていません。それぞれのエゴ・トリップを楽しんでいるだけです。私は記念すべき汚点となるために自殺します。」そして彼女は自殺した。
客の要求により、上司のアムステルダムにやってもらい、私は助手を務める。バッド・ハレルセンとイヴォンヌは浮気の中、サニーはイヴォンヌと関係が出来る前の恋人、そして妻のヘレン。三人の女をバッドは愛という言葉で操った。アムステルダムはエゴの殻を破るにはこれしかないと三人とも撃ち殺してしまった。
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