三つ首塔         横溝 正史


角川文庫

「とうとう三つ首塔までたどり着いた。私、宮本音禰は、この男にすっかり征服されている。男は言う。「捨てやあしない、捨てやあしない。お前が遺産の相続人と決まるまで。」たくましい腕の中で陶酔境に落ちて行く。警官に追われている不安な境遇も、三つ首塔に待ちかめているであろう、将来のさまざまな恐怖も忘れて…・」
両親を失った私は、伯父の上杉誠也に引き取られて幸せな学生時代を送っていたが。突然黒川なる弁護士がやってきて、曾祖父佐竹善吉の弟玄蔵がアメリカでたいそうな成功をして、私が高頭俊作という見たことも聞いたこともない男と結婚するなら100億の財産を譲ろう、と言っているのだという。
ところが還暦祝いの夜、恐ろしい連続殺人劇が起った。舞台で体を絡み合わせていたアクロバットダンサーの一人が突然毒物死。彼女は後に笠原操と判明。次いで私が見知らぬ男を見掛けた部屋で高頭俊作らしい男、さらに伯父が高頭をさがさせていた秘密探偵岩下三五郎が死体となって発見された。ここに等々力警部に連れられて金田一耕助なる男が登場してきた。
その夜私はあの見知らぬ男に犯された。
黒川事務所に遺言状の写しが届き、佐竹一族の関係者が集まった。笠原薫(実は亡くなった操も対象者だった。)彼女には同じ関係者の佐竹建彦叔父がついているようだった。美少年古坂史郎に夢中の女島原明美、志賀雷蔵がパトロンらしい白痴的な花子、蝶子、佐竹家の直系で鬼頭庄七のつく由香利、そして私の七人である。高頭俊作が殺されたため、第二条項「七人に均等に配分」が適用されるらしい。他に玄蔵老人は武内潤伍なる男を恐れているらしく、その写真は三つ首塔に収められているという。そして最後にあの見知らぬ男は、ここでは黒川事務所の堀井敬三ではないか。
堀井に三つ首塔の由来を教えられた。玄蔵と彼に殺された武内大弐、大弐殺しの嫌疑で首をきられた高頭省三が祭ってあるという。その上で彼は「これから殺し合いがはじまる」と宣言、変装した私は堀井に連れられて関係者の職場を見に行くが、新宿のバー、ボン・ボンの奥で島原明美の刺殺死体に遭遇。事情聴取に堀井に教えられたアリバイを述べ立てるが、現場には音禰の血染めハンカチーフ。
堀井の助力で逃げ出すが、間違った車に乗ったため志賀雷蔵に捕らえられた。ところが志賀と根岸花子が毒入りチョコレートを食べて死亡、また堀井に助けられる。こうして私の地下生活が始まった。しばらくして私はぴったりした着物を着せられ、暗闇の性の饗宴に連れて行かれるが、警察の手が入り、今度は佐竹建彦の手に落ちた。一ヶ月ほど後、薫に攻められるなどしたが、逃げ出すも次には古坂史郎の手に。ここも蝶子が殺され、堀井に助けられるが、古坂の持つ三つ首塔の写真を持ちだすことに成功した!
そして私と堀井は冒頭の三つ首塔までやってくるのだが、古坂、鬼頭庄七、由香利、彼ら組みした案内役の法然上人に中につきおろされた。沢庵石を落とされ殺されそうになるが、幸い穴の中には天然のくぼみがあったために助かった。七日も食にありつけず苦しかったが、仲間割れから、由香利等が倒れ、私たちは金田一に助けられた。
金田一の説明で堀井が実は高頭俊作、俊作として殺されたのは従兄弟の五郎であることを知る。私たちは一緒になるように運命づけられていたのだ。回復した私が再び三つ首塔に戻った時、三つ首塔の秘密が明かされた。殺人現場から決定的証拠となる犯人のシガレットケースが見つかった。ついに正体を表した真犯人は……。
この作品は1955年、著者53歳のときの作品である。現代風俗を取り入れよう、読者にサービスをしようと心がけて書いているようだ。耽美的要素の強い風俗推理小説とでも称すべき作品。しかし美女が次々に悪漢に襲われ、そのたびに正体不明の男に助けられるという趣向はややエロ・グロ趣味との見方もできるか?
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