百舌の叫ぶ夜 逢坂 剛


集英社文庫

 百舌は筧を殺害しようと、喫茶店から靖国通りまでずっと跡をつけていたが、浮浪者に囲まれている主婦3人に遭遇した瞬間、何かが爆発、あわてて逃げ出す。この事件で二人が死んだ。公安三課の倉木は、上司の若松警視長や室井本部長から干されながら、持ち前の押の強さで情報を集め始める。死んだ二人のうちの一人は、自分の妻だったのだ。しかし彼は又右翼の豊明興業の手先に襲われ、病院に収容される。
 豊明興業の赤井は、木谷とリビエラ支店長でテロリストの新谷を珠洲市近くの狐狼岬から突き落とす。新谷は、死んだと思われたが、赤井を倒して、危機を脱する。しかし彼は記憶を失っていた。自分を取り戻し、殺そうとした奴らに復讐するために奔走する。しかし彼もまた豊明興業に何度となく接触した後、捕らえられてしまった。
 新宿で使われた爆弾は、中南米テロが用いているものだった。新宿警察署の大杉も、公安若松警視や明星警部補の冷たい視線に耐えながら、爆発事件の捜査、事件の核心が、警察機構の一部と結びついた豊明興業を中心とする右翼グループと、これに対立する筧の属していた左翼過激組織「黒い牙」に事件の核心があることをつきとめた。背景に次第に左翼政権を倒した中南米サルドニアのエチェバリア大統領の訪日計画、豊明産業の追う謎の書類の存在が浮かび上がった。
次第に捜査が進んでいることをおそれた豊明産業幹部の野本は、通じていた公安の若松警視長と善後策を練る。豊明産業と公安の癒着を示す書類はどこに消えた!そこに新谷こと百舌、病院を抜け出した倉木、公安内部の右翼との癒着を調べていた津城警視と明星がひそかに押し寄せる。野本の仲間は、いつの間にか百舌の餌のように刺し殺されていた。エチェバリア暗殺計画、筧に強請られた女の仕返し、室井の公安での主導権奪取計画など、真相が次々と明らかにされる。そして自己保身に走る若松が狂気に陥り・・・。
一見関連のない活劇場面が続き、次第にそれが一つの方向を取って行くという手法を取っている。それら場面は起こった時間が必ずしも時間通りでなく、しかも叙述トリック(新谷は実は死んでいて、双子の弟で普段は女装をしている百舌が新谷として活躍する事)を使っているからわかりにくいが、スケールが大きく、登場人物がだれもが暗い影をひきづり、読者を飽きさせない骨太の作品に仕上がっている。
 いままでに「カデイスの赤い星」「燃える大地の果てに」などのスペインものを読んだが、この作品は趣が大分違う。何よりも読者を飽きさせない活劇の展開を念頭に置いているように思えた。
990906