講談社文庫
情報文化大学考古学研究室は漆原安雄教授を中心にエジプト・ルクソール王家の谷付近の発掘調査を行おうとしていた。他にメンバーは助手の柏原、宮地玲香、無口な玖繰幸雄、学部の女の子二人である。しかしこれに宮地と同窓の週刊誌記者新郷敏之、今売り出しの漫画家の梓美紀こと古割美紀子、その娘麻由、アシスタントの響ゆかりが加わる。実は新郷はかって古割と同棲していたことが分かる。
発掘調査全体は鷹岡大学の葦沢教授グループが行っている。発掘地の割り当ては葦沢が行ったため、鷹岡大学のもっとも有望なケニイト葬祭殿を行い、情報文化大学の割り当てられたネクエンラー王の葬祭殿は何も出ないだろうと予想された。しかし漆原は手柄は凡て彼にもって行かれると信じるなど葦沢に異常なまでの対抗心を燃やしている。ところが未知の神殿らしい物が発掘されると、カイロに行っていた葦沢は調査を凍結させてしまった。そんなおり、麻由がいなくなった。
神殿に入り込んだらしいと情報文化大学グループは強引に捜査に乗り出す。地下にある未知の神殿に入るとふと入口のドアがしまり全員が閉じこめられてしまった。明かりもろくになく、方角もはっきりしない地下、皆を不安が覆う。やがて玄室の側室から矢に射抜かれた響ゆかりの死体が見つかった。そして側には弓を持つネイト女神像。犯人推理をしているうちに今度は反対側の側室でエジプト側からつけられたハッサン監査管が同じように死んでいた。
後はクリステイの「そして誰もいなくなった」さながらに神殿に潜った物立ちの死体が次々と見つかる。頭上に斧を振りかざした不気味なマアト神のもとでは梓美紀と新郷が脳天を叩き割られて死んでいた。ミン神の柏原が振り下ろされた穀竿にはねとばされ、上向きに固定された刃物に全身を刺されて亡くなった。学部の女の子二人は蛇のように落ちてきた石に押しつぶされた。
やがて玲香とともにいた玖繰が事件の解決の糸口をつかんだ。しかし漆原教授も死体となって見つかった。発見されたパピルスに象形文字で書かれた文書が一部解読され、4千年前の密室殺人事件が解かれる。相手に追いつめられた王は自ら死者を装って数々の殺人装置が施された墓に閉じこもった。その殺人装置が今働きだしたのだ!それでは麻由はどこにいるのだ。わずかに残った玲香と玖繰は墓から出ることができるのか。
死者の仕掛けた殺人装置が働いて、次々殺人が起こるという想定は泡坂妻夫の「乱れからくり」を思い起こさせた。才能のある人の作品らしく、古代エジプト王朝の解説やからくり殺人など良く描かれている。他の作品も機会があったら読んで見たくなった。
しかしここまで書くと、殺人装置の図による説明、象形文字を読者と共に読み解くような説明なども欲しいような気がした。人物の書き込みと言った点からは物足りなく、また新郷と美紀の関係も浮いている感じだが、推理中心のエンタテイメント小説だからこれでよいようにも思う。
010728