日本国防軍を創設せよ    栗栖 弘臣


小学館文庫

改革すべき16の要点…自衛隊は国防軍にせよ
・ 天皇との距離を縮める=天皇に自衛隊を御視察していただきたい
・ 首相の指揮権を明確にせよ=自衛隊の指揮権行使につき、閣議決定を前提とすることはおかしい。
・ 対外姿勢を明確かつ毅然とせよ=国内には声高だが、外交交渉では消極的だ。
・ 自衛隊は国防軍とせよ=自衛隊を国を守る軍隊と明確に位置づけてほしい。
・ 統合幕僚会議議長の職責と地位を明確にせよ=明確にし決済権を与えよ
・ 事務次官の職務を限定すべし=事務次官が直接自衛隊を監督する現行制度はおかしい
・ 内局と統幕の業務の重複を避けよ=制服(軍人)の特殊性を認めなければ、いつまでも自衛隊の性格が判然としない
・ シビリアン・コントロールの正しい運営=自衛隊のコントロールは首相と長官によるコントロールとせよ
・ 駐在武官に対する扱いを国際慣行通りに=武官制度は軍人同志の交換の場、シビリアン部局の介在を認めるべきではない
・ 武器使用の場合を、臨場感を以って認めよ=武器使用を正当防衛に限定するのはあやまり。PKOに派遣しても自衛を認めず、他国群の庇護下に置く政治家の心理は不可解
・ 奇襲対処、交戦規定を早期に定める=予想外の現象対処方法を法律で定めるのは無理。一定の対処方針を決め、細部は現地の判断を尊重すべきだ。
・ 有事法制を真剣に、立法化を前提に考慮すべし=米軍支援と自衛隊の緊急時の行動を許容してほしい。
・ 国民の愛国心、自衛官に対する敬愛心を植え付けるべきである=たとえば観閲式はもっと目立つ場所でやらせてほしい
・ 民間防衛担当の内務省を復活させよ=民間防衛について何一つ方針が示されていない
・ 平時警備の必要性=領空侵犯などへの対応などが必要である。
第一章 わが国の置かれた立場
戦後、多くの国民はわが国が悪かったと占領軍に教えられたままを信じて、開戦にいたる経緯を知ろうとしないのは情けない。愛するもののために死ぬのは人間性の極致だが、国民各個が愛する国家に殉ずるのもこの上なく崇高だ、と考えてほしい!
占領軍たる米国は当初日本を無力化しようとしたが、朝鮮戦争勃発によって方針を変え、「警察予備隊」の創設を命じた。その後保安隊を経て、独立後昭和29年に、自衛隊となり、明瞭に防衛出動の規定を設けた。しかし治安思想が底流にあるためか、現在まで軍隊的ではあっても真の軍隊になれず、周囲の状況や諸外国の要請にこたえられないありさまである。自衛権の定義は存在せず、相手に戦略的な攻撃力を持つと言う意味で脅威を与える兵器はもてない、などと言うのはナンセンスだ。
日米安保条約は日本の要請に基づき、アメリカ合衆国軍の維持を希望するものだが、事前協議制などを導入され、日本は一応独立国としての対面を保っている。しかし注意したいのはこの条約で義務として米軍が参戦するとの規定はない。また2ヶ月以内に撤兵できないと予想される場合は上院、下院の承認が必要である。したがって少なくとも当初は、わが国が独自に戦闘を交えることを覚悟すべきである。
その際シビリアン・コントロールを杓子定規に適用していては物の役にたたない!
第二章 安全保障と軍事力の関係
平時における国家安全保障は外交活動によって守られる。しかし外交は軍事と両輪の関係じある。軍事力の意義は国際的信用を得、外交の裏付けとなることである。その意味で軍事力の意義は大きい。危険が高まると軍事力が物を言う!
軍隊を動かすのに、わが国は法律待ちで、これでは危機管理に対応できない。有事には平時とは違った対応が求められる。有事立法は平成10年に周辺事態関連法が成立し、米軍を支援する場合の法令の特例が立案されたが、それ以外は先送りである。
第三章 戦争とは
人類の歴史を見ると戦争が常態であって、平和であった時はごく一部しかない。戦争には正邪の区別はない。勝てば官軍、負ければ賊軍である。そのような時逃げるしか考えていない日本国民は情けない。二国関係が安定するには勢力均衡、覇権安定(一方が覇権を取る)、相互依存である。米国との関係において各国が望んでいるのは相互依存だが、米国が望んでいるのは覇権安定と考えるべきだ。
その米国は、日米安全保障条約があっても、自国の利益を優先し、日本を守ってくれるとは限らない。しかも非常時に自衛隊の指揮権をどちらが問題である。日本国内についてみても首相の場はなく責任は極めてあいまいである。
PKO活動に着いて言うならPKOとPKFを分けて議論するのは詭弁、携行する武器を国会が決める、武器の使用に着いて刑法の正当防衛、緊急避難に該当する場合を除いては、人に危害を加えてはならない、などナンセンスのきわみだ。
第四章 防衛庁・自衛隊が抱える問題
シビリアン・コントロールのもとに文官がまるで武官の上に来るかのように口を挟んでくる。予算もどういう訳でGNP1%というのか不明だが、その名の元に低く押さえられている。その上在外法人救出の際の輸送機使用の問題、在日米軍後方支援の範囲など国際常識では考えられない枷をはめられている場合が多い。これらの結果、何かと言うと会議で物事がスムースに進み様がない。
第五章 東南アジア動乱の可能性とわが国への影響
東南アジアの想定される動乱と日本の対応を考える。
北朝鮮の南進=北朝鮮の可能性は改革解放路線を取る、亡命かクーデターで体制変換でこの場合は難民対策が問題、南進の3ケース。南進は漢江まででゆきづまるが被害は甚大、彼らは日本にミサイルを使う可能性大。日本としては米軍の後方支援で一部基地を明け渡すなどが必要か。対馬に難民対策などの対応。原子炉へのゲリラ対策。西日本は米空軍の管制下に入るかもしれない。
台湾海峡における紛争の想定=中国は完全に要塞化されている金門島、膨湖などを取った後本土を攻める。その場合台湾海峡の制空権を廻って激しい争いになろう。米軍参戦は大義名分が難しい。海上臨検などを行うかもしれない。反撃した場合、海岸部に限定したものになり、戦後の交渉余地を残すだろう。日本は沖縄方面の制空権をあけわたすことになり、同時に後方支援を依頼される。この場合中途半端な対応は許されない。難民問題、ゲリラ問題等は起こりそうにない。
南沙諸島問題
インドネシアとフィリピンの内紛
インド・パキスタン間の緊張
中国、極東ロシア軍、わが国への侵攻
以上のような問題に対し、現有勢力である程度の対応は出来ると考えられるが、本格的なわが国への侵攻がおこった場合には兵力の不足に悩むことになろう。
第六章 わが国の採るべき安全保障上の施策
国家存立の観点=宗教教育がないため、外国教育だけを模倣して肝心の点、精神面が抜け落ちている。このままでは国の将来はまことになげかわしい。「国防の基本方針」には愛国心の高揚を歌っているが、政府自体が無責任体質だ。
国防的観点=日本は国防に関し、自主性を放棄し、米国に依存しはなしできた。米国は片務的協約をおしつけ、日米安保条約を解消すると脅しながら外交交渉を有利に進めてきた。
自主性尊重が大切だが、自国の汚点を義務教育で教え、愛国心を養おうとしないような体制では問題外だ。国連第一主義を唱えるむきもあるが、国連は各国利害の衝突の場にすぎない。
作戦的観点=防衛庁といういまだ省にすらならぬ組織であることがおかしい。そしてシビリアンコントロールと称して文官が入り込んでくる体制もおかしい。首相指示でまとめるべきだが、その場合はっきりした補佐機構が必要である。
戦術的観点=武力公使と武器使用を区別するような議論はナンセンスだ。周辺国有事への対応は早急に定めなければいけない。
具体的問題=ロシアの脅威もさったわけではなく、わが国は北と西二方面作戦をとらざるをえない。しかしわが国には空中機動旅団に対応するものが弱く、ミサイルの射程も短く、さらに海上自衛隊は空母を持っていない。
他に経済的観点、環境的観点等の問題も考えられる。
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