日本探偵小説全集6
沙翁記念劇場が若手富豪によって企画され、建設されることになったが、提案者で日本の沙翁劇俳優の第一人者風間九十郎の意見が退けられ、平凡な建物になった。二ヶ月前九十郎は去り、代わりにあの法麟太郎が自作の戯曲「ハムレットの寵姫」を演ずることとなった。この戯曲はホレイショが女性で、ヴィッテンベルヒに遊学中、ハムレットと恋に落ち、嫉妬のためにオフェリアを殺した上、王クローデイアスやデンマーク王とも関係するという破天荒な作品。ハムレットに法水、王クローデイアスにルッドウイッヒ・ロンネ、王妃ガートルードに九十郎の妻衣川暁子、亡霊と侍従長ボローニアスに淡路研二、オフェリアに娘の久米幡江、ホレイショに息子の陶孔雀という布陣である。
好調な出だしだったが、幡江は「舞台に父の亡霊が出る」、柱が揺れ動く、などとおびえ始める。そして九十郎からの奇妙な手紙、果たして彼は生きているのだろうか。見せ場のオフェリアの入水は、オフェリアがホレイショに導かれて水の中に入り、裳裾が広がって奈落に消え、金雀枝の花びらが雪のように舞い落ち、再びオフェリアの屍体が現れる、そのような筋書きだった。方法はコンベアにのせてオフェリアを1回転させるのである。ところが三日目、二度目にオフェリアが現れた時、首筋が切られ、滾々と血が噴き出していた!公演は一端中止されるがすぐに代役を立てて復帰、今度はオフェリアの棺から風間九十郎の腐乱死体が飛び出し、陶孔雀が事故死した。
法水が犯行を解き明かす。亡霊の種明かしをした上、オフェリアは金雀枝の花びらに混入されていたクラーレか何かで麻酔をかけられ、コンベアに密かに取り付けられた刃物で首をかききられた。九十郎は失踪直後に殺されていた。犯人は・・・。
法水が戯曲を書き、しかも主演するなどとんでもない話だが、それはそれ、トリックが面白く、一見専門家風的な知識の披瀝も味があり、大変面白い。(1935 34)
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