集英社文庫
ヨーロッパのミニ王国ケント・クララからリン王女一行が、森と湖に囲まれたのどかな久羅羅市にやってきた。万全の警備体制をひくなど対策におおわらわ。お見苦しき者を隠す、方針に乗っ取り、無理矢理罪を着せられて、ブタ箱にぶち込まれたハードボイルド作家達磨駿介、ポルノ作家長者丸くに子、メルヘン作家風祭圭太の三人は共同で「普通の女の子にあこがれるリン王女は、夜陰にまぎれ、ひそかに宿舎をぬけだす。」との想定で執筆を始める。
ローマの休日によく似ているが、展開はより過激で、よりお下劣、王女役はヘップバーンよりどこかの漫才師にやらせた方がいいような雰囲気。作品はいつのまにか現実味を増し、県警の月光刑事とその後がまをねらう山形刑事、十時助教授を中心とする大誘拐団、十時に金を貸している暴力団、クララ王女失踪と聞いて追いかけ始めたロックグループ、鬼頭万作総理を中心とする国家権力などが入り乱れて大混乱。
抱腹絶倒受け合い。それにしても作者の詩的センスの良さに感心させられる。誘拐と言う重いテーマもこんな風に軽やかに書けたら楽しい。でもどうしたらこういうセンスって養えるんだろう。やっぱり私はまじめすぎて、アクユウがいないとだめ?
・受付でガタついていると、うまいぐあいに谷底警部補と色町宵子婦警が飛びだしてきた。テキが血相を変えている。
「頼む。逮捕してくれ」
「お気の毒だな。俺たちもう警官をやめたよ。俺たちだけじゃないよ。所長以下全員」
「何だって?」
「リン・クララ王女が消えた。百万ドルの懸賞金がかかった。警官で捜査すりゃタダ。素人が見つけりゃ百万ドルってことはないだろ。日本中おまわりさんがいなくなるよ。アバよ。」(338p)