講談社
かってサイゴンと呼ばれていた町はホーチミン市と名前を変えている。北の出身者だけがいばり、一般大衆は苦しい生活を強いられている。従兄弟のカイにつれられてホーチミン市に出てきたに出てきたチャウとマイはシクロ乗りになり、地元の悪徳警官キエムにねらわれながらも苦しい生活を送るようになる。
暴力団月慈会の砂田組長の女奈津と関係した元船乗りの坂口修司は、錦興会との争いの責任を取らされ、バンコックに逃亡させられた。追っ手に気付き、サイゴンに逃げるが、難癖を付けられたチャウをかばったことから、キエムの恨みを買い、悪徳ブローカー磯貝栄一の保護を受けるようになる。
カイたちは苦しい生活を抜け出すために日本に行くことを考えはじめ、坂口の元で日本語を習い始める。ようやく船が見つかり、まずカイの仕事仲間テイエップが行くことにしたが坂口が忠告したとおり罠だった。彼らは沖で官憲に脱走者達を渡し、財産を奪おうとしていたのだ。テイエップは、気付いたが争いになり殺されてしまった。
カイ達は一時田舎に引っ込み、ぼろ船を使ってベトナム脱出を夢見る。一方坂口はキエム等に捕まり、ようよう磯貝に助け出されるが、そのために彼に押さえ込まれ、ヴェトナム人を日本に運ぶ船の準備をさせられる。しかしチャウの妹マイに泣きつかれ、カイ達のもとに赴く。余りの無謀さに一方で望郷の念も募っていた坂口は「おれがお前達を日本につれていってやる。」と請け合う。坂口の指導で老漁船員アンの船を買い受け、船の位置を知らせるGTPも密輸し、独力で日本を目指す。
しかし船は官憲の追跡を逃れるために台風の合間をぬって北上するがもう沈没寸前だ。その上坂口の行動に不審を持ったカイ達が主導権を取ろうと坂口から銃を取り上げてしまった。一方日本では奈津が坂口受け入れの準備をしていたが、情報は砂田に筒抜けだった。砂田は坂口を将来の敵とおそれのぞかねばならぬ、と考えた。嵐を乗り換え、ようやく船は黄金の島(日本)に近づいたが…。
良くできた冒険小説である。著者のヴェトナム人達に対する暖かい眼も安心感を与える。筆力は大変なもので読んだときに感じる臨場感は素晴らしい。ただ何となくホワイト・アウトなどと似た筋書きで結末が見えてしまうのが物足りない気がする。「謎を解いて、考えて」そして結末はどうなるか分からない、とんでもないどんでん返しが待っている、というミステリアスな部分が欲しいと思うのは的外れだろうか。
010713