文春文庫
ペルソナ・ノン・グラーダ
田園調布の路上に乗り捨てられた赤いジャガーの中で、パレスデパート取締役綾瀬伸行の妻英里が殺されていた。やがて彼女は某国大使館員フィリップ・バンホーテンと親しかったことが判明し、彼に容疑がかかったが、大使館員であるため外交特権があり容易に手が出せない。やがて彼は「好ましからざる人物」(ペルソナ・ノン・グラーダ)として帰国してしまった。事件は灰色のまま終わるのか。しかしあきらめない捜査陣は、ついに綾瀬のアリバイを証言した女が実は綾瀬の愛人であることを掴んだ。
艶やかな声
大瀬勇吉は電話で殺人の依頼を受け、バーテン赤木慶次をマンションの一室で殺した。しかし似顔絵と証拠を示す情報が<目撃者より>として当局に送られてきた。その結果、大瀬は逮捕された。しかし大瀬は殺人を認めたものの、依頼者は艶やかな声をしていた、という以外何も知らなかった。やがて7ヶ月前の交通事故で一人の男が死んだが、事件に大瀬がからんでいることが判明した。
カビ
広橋光男は、53歳のまだ男盛りに、肝臓癌で苦悶死を遂げた大友俊繁の告別式に望んだ。彼はどこか見覚えのある女ヨウ子の車に乗せられて帰路についた。広橋と大友は抵当証券制度を利用して悪事をくりかえしたが、中でも喜多村を自殺に追い込んだ一件は後味の悪いものだった。ヨウ子は「大学で微生物を研究し、カビ専門である。」そうだ。ある種のカビは、それを投与すると発ガンまでの時間に個人差はあるものの、確実に発ガンさせることが出来る。広橋は喜多村の通夜に出掛けた時、最後にそういえばヨウ子ににている喜多村のの妹が入れてきた熱い苦いココアの味を思い出した。
俯く女
二日市温泉で同宿の男女が一酸化炭素中毒死した。男は久米和典、彼は久米商事社長の御曹司であったが、修行のため別の建設会社で働いていた。女は県庁で課長補佐を勤める助川多喜夫の妻志摩子であった。心中かと思われたが助川は「家内は呼び出されて、殺された上、すり替えられた。」と殺人説を強硬に主張した。それが崩れると久米に無理心中させられた、と主張し始めた。一方で助川は志摩子の浮気に感づいていた節もある。助川のねらいは何だろうか。
宅配便の女
国立総合病院産婦人科医長高瀬光治の元にと届けられた段ボール箱から出て来たのは女の死体。彼女は大手洋酒メーカー課長貝島諒一の妻、結花子と判明した。荷物は実は貝島がよく商売上メロンなどを発送する荒川米店入口においてあったため、米屋ではいつものことと送ったのだった。結花子はブランデーかワインなどとの酒類と一緒に青酸カリを飲まされたらしい。彼女は両親から引き継いで大変な資産を持っている。22歳の時結婚のしたがのちに協議離婚、37歳で貝島と結婚したが高瀬と不倫関係にあることが分かった。同時に彼女は男達が彼女にプロポーズするのは財産目当てであることを認識していたようだ。貝島が不倫の妻を殺して高瀬に送りつけたか、それとも高瀬が殺して自宅に送りつけ被害者を装ったのか?
020727