ピタゴラスの時刻表     吉村 達也


講談社文庫

一年前、高校時代クラスメイトだった仲田祐三、私立中学で数学の教師をやっている領家宏、公立高校で物理の教師をやっている若島悦子、それに領家の婚約者である本郷朱実が、仲田の実家の旅館に集まった。ところが仲田がいなくなった。気がつくと庭のクスノキで首をつっており、口にテイッシュペーパーを詰め込まれた死体がゆっくりとまわっていた。側には大きな石と椅子が転がっており、ポケットにはピタゴラスの時刻表と題した新潟、東京、米原あたりの時刻表と思しき数字を書きいれた紙切れが突っ込まれていた。自殺、他殺の結論が出ぬままに時間が過ぎた。
今回、十五年ぶりのクラス会なる招待状が配られた。出だしは「みなさん、「ピタゴラスの時刻表」というものを見たことがありますか。」と思わせぶり。
集まったのは領家宏、若島悦子、そして同級生だったが今売り出し中の人気作家三杉亮、かって美人の誉れ高かったが、結婚に失敗し、過食症から一転して拒食症に陥り、今は見る影もなくやせ細った大和典絵、旧姓橋本典絵の4人。帝国ホテルに集まったが、送り主の書いてない招待状とピタゴラスの時刻表がやはり話題になった。その日彼らは大井町の領家の家に泊まったが、今度は三杉がおなじような方法で殺された。
木原は教科書会社に勤務しているが、一方で推理作家を目指している。今回三杉の推理小説部分のゴーストライターをすることになり、苦しんでいた。軽井沢純子は若島家の天才小学生直樹君の家庭教師をい勤めているが、母親が腹違いの直樹の姉悦子を目の仇にしていることに辟易している。この二人が事件に取り組む。
謎の主眼は殺害方法と「ピタゴラスの時刻表」。
犯人は、自分の体重と石で木の枝の上にあるバネをちじんだ状態に保っておく。被害者に石を持たせ、バネにつながっている紐で作った穴に首を突っ込ませる。犯人が手を放し、石と被害者の体重が紐に直接かかるようにする。被害者は上下から引っ張られた状態になり、石を放せば首がしまるというトリックである。苦しんでじたばたするうちに紐がよじれ、死体が回る状態も出現する。(このトリックはずいぶんわかりにくい。どうして図を用意しないのかと思った。)
時刻表は散々悩ませるが、仲田と領家が高校野球のトトカルチョに手を染めていたことが暴露され、ラジオの周波数と地名を組み合わせたものとわかる。

軽い青春推理小説といった趣き。悪くはないがピタゴラスの時刻表と殺害手段に何か関連がほしかった気がする。
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