講談社文庫
推理パズルと言うのがある。どうもこの作者の短編はそれを長くして作った作品ではないか、と思わせるような所がある。いづれも本格推理らしく謎の設定が見事で面白い。並行して読んだ新人の推理パズル集と比べると、ずいぶん鮮やかで切れ味が鋭い。特に「屋根裏の散歩舎」が良かった。こういう茶目っ気のある作品はなかなか書けるものではない。以下に作品の謎を中心に解説を試みる。
動物園の暗号
鶴、牛、鰐、鷹、鶴、鹿、鯉、牛、亀…・と続くダイイングメッセージが直接犯人を示しているという。それにしても日本の鉄道には動物の名が含まれる駅が多いですね。
屋根裏の散歩者
女性を殺してその髪を奪う連続殺人事件が起こっていた。五藤甚一はアパートを経営しており、密かに屋根裏を歩き回って店子の様子を覗いていた。その五藤が殺され、店子の一人が連続殺人魔であるとする日記が発見された。しかし彼は店子の名前を記号で書き表していた。I、大、太、く、ト、で、犯人は大だ。深夜火村英生が実際に屋根裏に登り、店子を覗いて見ることにした。
赤い稲妻
弁護士にして次期市会議員の田宮、その愛人のジェニファー・サンダースが雷雨の日、自宅マンションから墜落死した。ところが向かいのマンションから見ていた男の証言では「雷が光ったときバルコニーで二人が争っていた。次の雷のとき女が落ちて行った。」部屋は完全な密室。一体どうなっているのか。しかも少し後に田宮の妻の運転する車が踏みきりで動かなくなり、はねられ、妻は他界してしまった!
愛人と妻が争い、愛人が突き落とされる、妻が飛び降り自殺する、これではスキャンダルになり、私の将来は絶望と考えた夫が妻を事故にみせかけて別の場所で殺す…・。
ルーンの導き
中国系アメリカ人、シカゴの出版社の編集者サイモン・リーが京都で殺された。ダイイングメッセージは英語のもとになったというルーン文字で書かれた4枚の石。容疑者は日本人、ドイツ人など国籍の違う4人の男。何とかルーン文字を解読しようと警察も有栖川も火村も悪戦苦闘。しかし石の数4に対応するISBN(国際標準図書番号)が示す国は一体どこだったのだろう。
ロシア紅茶の謎
パーテイでロシア紅茶が供され、飲んだ一人が突然苦しみだし死んでしまった。青酸毒による殺人である。しかし誰も紅茶に毒を入れるところを見ていない。あらかじめ青酸毒を氷に封入し、窓の外に置いておく。カーテンを開ける時に口の中に放り込み、運んでいるロシア紅茶に吹き入れるというトリックは確かに凝っている。
八角形の罠
一階にあるホールで芝居リハーサル中に突然停電。明かりがつくと主役が青酸毒を注射されて死んでいた。しかしその注射器が二階のロビーで見つかったことから犯人が割れた。エレベータで凶器を二階に送り、共犯者が隠すというトリックが面白い。
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