祥伝社ノン・ポシェット
英国の香港租借期限が97年に切れる。80年代になってこの問題に言及したサッチャー首相は当初期限を延長する腹だったが、2年の交渉の後、突然中国に返還することに決めてしまった、いかにも唐突でおかしい。この疑問に答える形で書かれたフィクションである。
82年ロンドンでダヴィナなるモデルが、あるオーデイションを受けに行き火災にあい、九死に一生を得たが、そのとき偶然に英国情報局の所持する問題の書類を手に入れた。
92年になってこの書類が、いまだに存在することが判明する。英国財閥のゴルトシルト家は、アヘン戦争以来、香港を我が物とし、巨額の利益を得ており、返還など考えられない。その書類を手に入れ、香港での権利を主張したい。地元英国資本の上海香港銀行も同様。一方、ワシントンポスト紙は地元英国資本の不正蓄財を嗅ぎつけ、ライバル同志のダナとメイミ・タンが調査を始め、これにCIAがからむ。一方日本の外務省は、ゴルトシル家が日本を狙っているらしいと知り、沢木を中心に防衛に当たらせる。そして東洋人として始めてオスカーをとった美貌の女優アデイールと日本の西条もまたこの書類を手に入れ、自己の欲望を達成させようとする。さらに謎の計算機のプロにしてコピー商品を多く手がけたラオ。
思惑が入り乱れ、おさだまりのスリル満点の活劇が展開されるわけだが、ハッキングをはじめコンピューターだましの技術が縦横に駆使され、話を面白くしている。最後に西条、アデイール、沢木、ラオが交渉に中国に赴くが、当局に捕らえられて・・・・。そしてその書類とは一体どんな物なのか。
全体どうもどたばたしすぎてマンガテイックとか、作者の考え方はでているものの登場人物の性格が書き込まれていない、などの問題点はあるように思う。今回船戸与一の作品を読んだ後だったので特にそれを感じた。
しかし、日本人離れしたスケールの大きさとプロットの素晴らしさには脱帽。米、英、中に加え財閥や個人の思惑が絡み合い、はらはらどきどきの連続で面白く読める。最後に中国の長老会議が出てきたり、メイミ・タンは三重スパイでした、アデイールが宋藍令の娘でした、などとしているところも楽しい。
技術的な話も時折本当かな、と思うところもあるけれども、技術の進歩を考えればこのくらいあってもおかしくない?
最初に秘密の書類が紛失するのだが、そんなに重要な書類をどうしてそんなところに隠していたの、コピーかマイクロフィルムは無かったの、掌紋、声紋、科白、作動時間帯がすっかり会わなければ開かない箱なんて本当に出来るの。大体どうして中の物が開けなければ取り出せないの、開かなければ壊せばいいじゃない、それから無線のスイッチ一つでビルの電源をON-OFF出来る? マシンガンを持った女性が侵入できるくらい中国の要人警戒態勢は情けないの・・・・・なぞと聞いてはいけないのかもしれない。
・香港の取り扱いに関する中国側の基本的政策(53P)
・一般的な教育の枠の中で、日本という国の素晴らしさが、結局は少しも語られてこなかったことに、彼は気づき、あきれた。(79P)
・ヘッジファンドのたくらみ(99P)
・BCCI事件(222P)
・無線の発信器で大きなビルの電源が開閉できる?(334P)
・ハッキング(354P)
・デスクマットで技術者たちのて掌形データが読み込まれ、データ化される。(383P)
・マッカーサーの日本コントロール(412P)
・天・地・人を意味する三本の指で行う暗号、三指訣(542P)
・生阿片・・・モルヒネ・・・ヘロイン(568P)
・円高演出、株式市場混乱、バブル崩壊(583P)
(龍の契りノート)
92年オスカーをとった女優のアデイールはある調査を行うことを決意。
第1部
82年マリー・クアントのオーデイションを受けに行ったダヴィナは火災にあい、九死に一生を得たがそのとき重傷を負った英国情報局チャールスの秘密書類を手に入れた。
92年香港の中国返還をきらう上海香港銀行の包とフレイザーは失われた書類の存在を知り、リー等に命じて調査を開始。
沢木は英国の大学で香港返還についての疑問を提起して驚かせたが、日本に呼び返された。
そしてゴルトシルト家が不正に蓄財し、その金を香港でマネーロンダリングし、日本を狙っていることを知らされる。沢木の英国の家に盗聴器が仕掛けられていたことが判明し、CIAの一人が何者かに殺される。囮調査を依頼され、香港に偽ブランド製品調査の目的で調査に出張。
ワシントンポストでメイミ・タンと競争しているダナは編集長のマギーに呼ばれ香港の権力を調べることを依頼される。
チャールスの覚醒を男爵が待っている。
香港に現れたアデイールは友人をつてでハイパーソニックの西条に接近。あの書類を種に中国政府との交渉を求める。
第2部
ダナは上海香港銀行の不正を確かめるべくラオを使って計算機への侵入を試みる。
CIAのランズデールがジュデイスに弱みを握られ、ワシントンポスト内のスパイがメイミ・タンであると告げる。
香港に降り立った沢木はダナに接近し断られるが、彼女がラオと近いと分かってびっくり。
沢木、ついにダナと会見。さらに沢木は国生等と財閥芝木のS資金を預けるという名目でフレイザー・包に接近。
チャーリーが包・フレイザーと会見。中国が女に脅迫されていると告げる。
ダナに頼まれたラオは受付の女陳を舞い上がらせ、ウオンに空中演技をさせ、停電を起こして、フレイザーの暗証番号を盗み出す。ダナは口座の動きと重要な密約らしきものをコピー。
オペレータが何者かが頭取のファイルにアクセスしたことに気づく。
ところがラオ、ダナ、ウオンは帰りの車で何者かに襲われフロッピーを奪われる。
ダナをおっていたチャーリーは巻かれてしまう。陳はようやく自分がだまされたことにきづく。フレーザーはチャーリーに脅迫者がアデイールと告げ、ロスに行かせる。
上海香港銀行に匿名電話。フロッピーと引き替えにウオンが中国銀行に5億ドル要求。ウオンは5億ドルに夢を馳せていたが、何者かに惨殺される。
ダナは実は沢木に助けられ、大使館の一室。一枚残ったデイスクは返されたが沢木はコピーしたという。二人が関係。ウオンの死を知り唖然。
第3部
ハリーの指紋読みとり技術。外務省で芝木の動き、ゴルトシル家の狙いを把握。ウオンが消える。
ロスでアデイールが誘拐される。ゴルトシル家でもあの文書を取り返すことを決意。
メイミタン、アデイールが誘拐されたことを知る。犯人の一人はフランク。
アデイールが不在で沢木は中国に行けるか危ぶむ。あの書類の入ったカプセルの開け方が公開されるがアデイールのみが知るパスワードが必要。西条はラオを呼び、中国市場開拓に際し、彼と組むことを決意。CIAに監禁されていたアデイールが逃げだし、西条の元に直行。
西条は太子党との結びつきなどラオの顔の広さに感心。
メイミ・タンとダナが疑心暗鬼の対談。メイミはダナを消すことを決意、狙撃し、重傷を負わせるが沢木が駆けつけ弾はわずかに急所をはずれる。沢木は外務省端末機に侵入者が出たことを知らされる。
ゴルトシル家の男爵はアデイールの後ろに西条がいると知り、愕然。
西条、ラオ、アデイールは北京にゆくべく空港に向かうが、途中李とゴルトシル家の殺し屋の挟撃に会う。しかし脱出して空港に着くと今度は沢木。ついに沢木は一緒に北京に向かうことになる。
CIAをあおってアデイールを誘拐させたジュデイスは悔しがり、ゴルトシル家に関係のない情報機関に情報を暴露することを決意。
第4部
アヘン戦争以来、中国の利権にゴルトシル家が関わっていた。秘密文書は返還後、主権を認める代償として香港をイギリスに譲ることに毛沢東が同意した物である。ゴルトシル家は中国と日本が結びつくことを恐れていることが分かる。
秘密のはずの飛行機はスクランブル攻撃を受け、北京に着陸。一行は毛主席記念堂に導かれる。中国につつぬけだったのはラオが情報を流していたからと判明。さらにアデイールが宋藍令の娘であることが判明。しかし西条の電化製品の中国における独占的販売、沢木の日中が共同してゴルトシル家に当たること、アデイールの中国の映画会社獲得等の夢が叶う。
最後に実はゴルトシル家のスパイだったメイミ・タンが逆転を試みるが倒される。
カプセルが開き最後に本物の契約書が焼かれる。
990601