新潮文庫
アフォリズムは格言という意味。複雑な人生軌跡を元に到達した作者の思いを、人生観を独自のアフォリズムにこめて読者に語りかけているところが非常に魅力的だ。プロフェッショナルな株投資の話も面白い。ただしこの話を読むと恐くて株など出来なくなる?他に麻雀やラスベガスのバカラ賭博の話も面白く、読者をワルの道に誘い込むガイドブックかも。
37才の梨田雅之は投資顧問会社見崎に見込まれて、「兜研」にさまよいこんだ。そこは海田グループの手先として動く機関、日栄産業を種に壮絶な仕手戦を演じるが失敗。ついに警察が入り、海田は逮捕、見崎は自殺して果てた。
無一文になった梨田は元の仲間の岸井やかって助けてやったアンを使って無一文から巨富を作り上げようと動き出した。金貸し屋日比原に助けられて、「群青」なる投資コンサルタント会社を設立。三年でケリをつけようと決心する。麻雀仲間などから集めた金を、建築屋朝秀などの確実な情報を頼りに選んだ「新日本航空」など値上がり確実な株に投資し、一旗あげた。一方でアンに高級会員制クラブ「ギャラクシー」を開店させた。その会員達の入会金やら、与えた情報で買った株から選られた利益の上前などを収入源に「群青」は成長していった。一方で梨田がほのかな恋心を持つ理子は、音楽にあこがれニューヨークを目指し出す。
「群青」のような会社を成長させる元は情報源だ。その有力な一人がラスベガスに同行した種田だった。「日亜化成」で大失敗したものの、再び「日栄産業」に着目。専務派と社長派が対立しており将来株の買い占めに動くことは確実と見られた。かって見崎の父が破滅に追いやられた会社とも分かった。一方で投資顧問法の施行が近くなり、投資顧問業者は客の資金を預かることも金融業者を仲立ちすることも出来なくなる。対策を急ぐ一方、施行以前にと会員からの預かり金を投資してまとめ買いを行い、あがったところで会員に買い出動をさせさらなる値上がりを呼ばせた。仕手戦である。苦しかった金繰りは改善されたが、買いささえには膨大な投資を強いられ奮戦中!
ニューヨークに去った理子から電話がかかってきた。「今日ね、こっちで株の大暴落があったんだって。史上最大の暴落だとテレビなんかでいっているの。自殺してる人もいるなんて…、ねえ、マサチン、聞いてるの…・。」
・やくざは、落ちこぼれを自認しちゃいるが、その実そうじゃない。落ちこぼれを自認するこ とで自分を正当化しているからだ。(116p)
・生きているという実感のない人生なんてのに何の意味がある。感動や刺激は、何かを成し遂げて行くその道程にしかありはしない。結果を求めているのは自分じゃない。それを求めているのは、いつの時代でもとうの本人ではなく、あかの他人なんだ。(315p)
・ この世の中には法が三つある。…・明文化されたやつ…・二つ目は条文にはなっちゃいねえが、一般社会に暗黙に存在する法…・三つめが、俺たちが一番大事にする法、つまり、自分の中に持っている自分のためだけの法って訳だ。俺の存在は他の誰にも縛られちゃいない。たった一つ、俺の心の中にある法という物で縛られている。(463p)
・ 人生は効率じゃないし、枠組みだけでもないと思う。失敗か、失敗でないか、壊れる物か、壊れない物か、そんな評価だけの生き方ばかりになったら、きっと世の中なんてつまらない物になるだろうね。(584p)
・ 日記をこれからは毎日つけていきなさい。一日に、たったの一行でもいい。でも絶対に人に読ませてはいけない、たとえ母親の私にでも。(675p)
000324