三度目ならばABC      岡嶋 二人


講談社文庫

まず設定のうまさに感心する。織田貞夫と土佐美郷という上から読んでも、下から読んでも同じ名前の大男と少女が探偵役として縦横無尽に活躍する。かれらは実際にあった事件を再現してみせる「奥様お昼です。」というTV番組を制作している。このような設定だと、事件の経過の説明が簡単で、番組を制作しているうちに事件の謎が浮上し、それを解いて行くうちに真相がわかる、という筋書きを無理なく進ませることができる。シーン単位での構成もすばらしい。トリックは斬新と言うほどではないが、推理ファン好みで、感覚も現代的、つい先を読み急ぎたくなる短編集。
三度目ならばABC
「連続ライフル発砲事件」取り上げようとすると、美郷が「今までに2件あったが失敗だった。これはクリステイのABC殺人事件をまねているのよ。」果たして関根という社長が狙撃され、死んだ。しかしカーテンのおりたガラス戸越し、銃撃地点は歩道橋の上と思われる。犯人はどうやって、ねらったのだろうか。実は犯人はライフルとボーリングの名手で、奥さんが共犯者。窓際においた植木鉢をスパットに見立て、ねらったものだった。
電話だけが知っている
成瀬なる若い女性の訴えは、「イラストレーターの雪野が自室で刺殺された。電話に指紋の付いていた恋人の西野が逮捕された。助けてほしい。」というもの。二人は最後に電話機に埃がついていなかったことから、犯人が西野に罪を転嫁するために偽装工作を行ったとみやぶる。犯人は雪野の債務保証をしてしまったが、自堕落な雪野は破産目前、それなら保険金を取ってやろうと殺したのだった。
三人の夫を持つ亜矢子
亜矢子は三人の夫を持っている。偽装工作が発覚し、ナンバーワンがナンバースリーを殺したらしいということになった。ところが美郷はナンバーツーがナンバーワンとナンバースリーを同時にのぞこうとして行った、と主張。それを裏付けるためには小仏峠と亜矢子宅にほぼ同じ時間にコロナが現れたことになる謎を解かなければならない。答えは亜矢子宅のものはレンタカーだったのだが、するとどうやって音を立てずにレンタカーと本物を入れ替えたのか。しかし冷却ファンを回して、車を動かすことができるかどうか、私にはわからない。
七人の容疑者
森山連太郎の長女真弓誘拐事件を調べている時に、私のカメラがなくなったと騒ぐ美郷。事件は真弓がいなくなり、脅迫電話が自宅にかかり、長男の秀夫がでると500万円の要求。指定された駐車場においたところ、お手伝いおばさんがみつけ、警察に届けようとした。秀夫が現れて「それは事情があって・・・・。」と身代金の事を説明しようともたもたしているうちに、金が消えてしまった、という。しかし、なぜお手伝いおばさんを犯人と考えなかったのだろうか、などから足が着いた。単なる真弓と秀夫の狂言強盗。
十番目の殺人
狼男、蛇女、フランケンシュタイン、半魚人、ドラキュラ、魔女に変装した6人が、タキシードの支配人のリードで一室に入り、食事・・・と、思いきや、突然電気が消え、気がつくと窓際のドラキュラが刺殺され、狼男が階段の下でのびていた。狼男がドラキュラを刺殺したと考えたが、実際にやってみると、凶器をどこに隠していたのかなどどうもおかしい。実はあらかじめ支配人がドラキュラを殺し、死体をテーブルの下にセット、自身はドラキュラの服装で登場した。停電と同時に死体をひきづり出したのだが、狼男に気づかれたため、階段から突き落とし、彼に罪を着せようとしたのだった。変装パーテイは、クリステイの「戦勝記念パーテイ」などを思いおこさせた。
プールの底に花一輪
スイミングクラブのプールの底に、おもりをつけられた美女の死体。証拠の見つかった手塚、クラブのマネージャー、死体発見者の清原が怪しい。美郷は、清原犯人説を唱えるが、死亡時刻にははっきりしたアリバイがあった。しかし美郷が殺されそうになってわかった。被害者を縛り、おもりと空気ボンベの吸い込み口をつけて水中に放置、空気がなくなると死亡。それまでの間に犯人はアリバイを偽装。発見者を装った犯人が、空気ボンベの吸い込み口を回収し、目撃者に見せたのだった。