殺人鬼            横溝 正史


角川文庫

殺人鬼
西洋のある小説家の説によると、五百人に一人の割合で、まだ発見されていない殺人犯人がわれわれの間にいるということである。あなたの隣人も殺人犯人かもしれない。
ある晩、小説家の私、八代竜介はコトコトという義足の足音を聞き、それにおびえているかのごとく見えた女を助けた。その後、女は賀川達哉の妻加奈子と分かった。さらに1週間後、またも義足の男に追いかけられて逃げ込んできた加奈子から、男が亀井淳吉で出征直前に加奈子と契った男で復縁を迫っているらしいと聞いた。そして達哉の母梅子の登場。
その夜加奈子宅に行き、近くの浅野と共に訪れると、賀川が撲殺され、加奈子が首を絞められ倒れていた。そして血のついた外套を着た義足の男が立ち去ったとの証言。
しかし賀川のそう葬儀が終わったころ、金田一耕助なる私立探偵が現れ事態は急速に氷解する。彼はあっさりと義足、外套などの変装用具を発見してしまった!やがて梅子の自殺。
殺人夫婦、彼らは実はすでに三人のヤミブローカーをサッカリンだの砂糖だのを好餌におびき寄せ、殺害していたのだ。そしてその実態を知ってしまった母の驚き。

黒蘭姫
エビス屋百貨店三階、宝石売り場、最近ある事情で首になった宮武謹二の後を受けて沢井啓吉が主任を務めている。古参売り子磯野アキが売り場を新人にまかせて席を外したとき、ヴェールの女がやってきて宝石を物色しだした。万引きしようとしたので、沢井が注意しようとしたところ、その横っ腹をえぐって逃走した。
ヴェールの女は時々エビス屋にやってくる。実は黒蘭姫の異名をとる社長の娘伏見順子で盗癖があり、店では彼女が盗んだ品物をつけておき、いつも実家に請求しているという。彼女は支配人の糟谷六助と婚約している。沢井の腹をえぐった女は果たして本物の順子だったのだろうか。やがて七階の喫茶店で第二の殺人劇、宮武が死体となって発見された。
同じ才媛でありながら、一方は社長の娘であるがゆえに万引きをしても許される、職場のあこがれの男もさらってしまう。他方は出身が貧しいがゆえに売り子のまま。その彼女が社長の娘の秘密を知ったがゆえに、利用しようと考えたが…・。

香水心中
「トキワ商会」の常盤松代に調査してほしいことがあると呼び出された。一家の遠縁で実質的に松代を支えている上原竜吉の運転で、金田一耕助は等々力警部と共に軽井沢に向かう。松代には三人の孫がいる。かたいが確実に見える松樹、松子、それに問題の多い松彦。そして車に突然関係者で妊婦らしい美代子が乗り込んできた。
Mホテルについてまもなく千ガ滝の別荘で松樹が別荘番の妻と心中を図ったとの報。駆けつけると松樹はテラスで首を吊り、女はベッドで死んでいた。あたりには気持ち悪くなるほどの香水の匂い。なぜか松代は「これは心中ではない、殺人だ。金田一さん、犯人を捕まえて!」と頼み込む。
金田一が調べると次々に疑問が湧き、殺人がそれぞれ別の場所で行われ、自殺を偽装していることが明らかになった。大叔母は松樹が優秀、松彦が問題と決め付け、悪事はすべて松彦のせい、と考えた。しかし松樹はそれを逆手に取り、自分の不始末はすべて弟にかぶせようとした。そしてふとしたはずみで起った悲劇。

百日紅の下にて
既出 
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