処刑台の昏き祭り     勝目 梓


徳間文庫

 電話が鳴った。手術中の砂泊市医師会会長荻野直彦が受話器をつかんだ。低い男の声。「お嬢さんを預かった。」東京のマンションに一人で住み、大学に通う姉の佳代が誘拐された。
 医療機関の少ない砂泊市に医療法人善陽会が綜合病院を建設しようとした時、地元医師会が反対し、土地所有者の新栄建設がどうしても土地を売らなかったから計画は挫折した。自宅押し入れ下の地下壕に誘拐した佳代をほうり込んだ柴は、その腕の中でぬくもりを失っていった妻の明子と息子の豊を思った。あのおかげで、二人は交通事故に遭った時、どの救急病院からも断られて亡くなったのだ。
 柴が、善陽会が土地の買収に失敗した裏を探ると、医師会の萩野と切れ者鯵坂が、新栄建設社長竹村が市長の矢吹に3000万円送った事実を突き止め、強請って土地を取得させ、売らせなかったのだ。 怒り狂った柴は「鷹」という復讐鬼に変心、佳代を誘拐した。「真実を公表せよ。」それが要求だった。
 矢吹、その私設秘書梶等は警察に知らせず、何とか事件を解決させようとする。萩野の元に用心棒として小山を送り込む一方、犯人探しに全力を尽くす。ついに柴を特定するが、警察を差し置いて逮捕するわけには行かない。そこで義理の叔父で暴力団員の荒川を送り込み、身代金を要求させ、営利誘拐事件に見せかけ、金を払うと見せて、襲い処分してしまおう、と言う腹だ。
 佳代は、トイレから救助信号を送ろうとして発見されて、縛られ、裸の写真を撮られ、荒川には暴行され、陰毛までそられた。しかし柴の目的を理解し、共感を覚えるようになる。
 最初の身代金受け渡しは警察が感づき失敗。しかしあくまで身代金にこだわる荒川は金を海中に沈めさせ、ダイヴィングで潜って、金を引き上げ、柴も殺してしまおうと計るが失敗、逆に梶の手先に殺されてしまう。あくまで事件の公表を迫る、柴は佳代と身代金を返し、逐電、ひそかに復讐の機をうかがう…・。

 官能的な若い女性の誘拐劇に伴う徹底したヴァイオレンスとセックス描写が素晴らしい。読みながら勃起しそう!しかしきびきびした文章でからっとしており、いやみのないところが救い。全体その鮮烈さは、私にハドリー・チェイスの「ミス・ブランデイッシュの蘭」を思い起こさせた。また潜水場面はパトリシア・コーンウエルの「死因」を思い起こさせた。(1980 48)
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