双葉文庫
「どこまでも殺されて」「私という名の変奏曲」など連城の作品には、トリッキーな作品が多いがこの作品も例に漏れない。実際の犯罪を起こす15年前に、これを真似た事件を起こし、犯人として服役、15年後の起こす犯罪の刑罰を先に受けてしまおう、というのだから。
(第1部)
夜中の1時ころ、荻窪のアパート栄荘107号室から出火、焼け跡から部屋の住人小幡勝彦の刺殺死体が発見された。勝彦が前夜6時半ころ殺されたこと、出火原因は外からの放火だったことが調べで判明した。警察は、妻の小幡斐子、夫の愛人の高木安江双方に容疑をかけたが、最終的に斐子は、8時ころ友人宅に出向いたが、途中でライターを買ったこと、夜中に友人宅を抜け出したことが判明し、殺人放火容疑で逮捕した。斐子は、弁護を古い友人で好意をよせてくれている彩木に依頼した。
安江の証言で、斐子に7年付き合った早川という愛人がいたこと、小幡は斐子を受取人として1億円の保険金をかけていたが、直前に受取人を安江に変えていたことが明らかになった。その結果保険金目当ての線が消え、愛情の縺れということで、斐子は20年の懲役刑を受けるが、彩木にはなぜそのようなことで斐子が放火殺人まで走ったのか、判然としない。「真実は別のところにあるのではないか。」
彩木は、斐子が毎年諏訪から1時間ほど入った山村で行われる、子に見立てた藁人形を焼くという暗い祭りに参加している事を発見した。6才の時に母と義父が争い、倒れた石油ストーブの火から出火、二人は焼死、斐子だけが助け出されるという事件が起きているが、斐子は、実は自分が火をつけた、と主張している。ひょっとしたら放火はともかく、殺人の犯人は安江で、斐子はその贖罪のために罪をひっかぶっているのではないだろうか。
(第2部)
それから15年後、横浜市のアパートで火事があり、焼け跡から西本厚夫の死体が発見された。西本は大阪でピストル強盗事件を起こし、服役、出所後行方をくらましていた男である。妻のノブ子は行方不明になっている…。彩木は15年前の事件に酷似していることに驚く。
ノブ子はひょっとしたら斐子ではなかろうか。
事件を再度検証すると、安江が斐子とコンタクトした後に自殺していることが分かった。川口市のアパートに斐子を探し当てるが、彼女は事件との関係を否定する。しかし昔の母と義父が殺された事件を担当した刑事の日記に、斐子が、素行の悪い箱崎雪治なる男に助け出されたとあった。
ひょっとすると箱崎雪治と西本厚夫は同一人物で、二人を殺したのは彼ではないか。今回の事件は、本命で斐子の両親殺しの復讐劇ではないか。15年前の事件の犯人はやはり安江だったのではないか。彩木の頭の中に事件全体の構図がようやく見えてきた。
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