徳間文庫
横浜レーヨン副社長西池定吉が、二十八歳の愛人入江恒子とラブホテルで密会中、脳出血で突然死した。ところが一週間後、恒子が、銀座の宝石店に西池からもらった黒真珠の鑑定依頼に来る。そして、横浜レーヨン社長等による同店がからんだ横領事件を暴露し、支配人を驚かせる。曰く三年間で二億五千万円の金の延べ棒と二千五百万円のダイヤが横浜レーヨンに売却され、それが社長と会長で分けられたではず、という具合だ。
早速支配人は、会社に報告に行くが、会社では副社長の黒い手帳がなくなっていることに気づく。あの女がそれだけ知っているのは手帳を押さえているからに違いない・・・・。社長候補の二人の専務、管財課長等が恒子にアプローチを試みるが、手帳を持っているかどうかも、なにを要求しようと言うのかもはっきりしない。そのうちに造成中のゴルフ場開発業者からもリベートをもらっていることを恒子はにおわせ、会社は大慌て。
最後にようやく恒子は手帳の所持を認めるが、会社が「盗んだものだから返せ!」というと「もらった物だ。」、「いくらなら・・・・。」と言うと「西池さんは「君が一生楽に暮らせるくらい価値のあるものだ。」と言っていた。」と主張。
事件はエンドレスに拡大して行く。
この小説は二つの点で非常に面白いと思った。
第一は恒子のしっぽをつかませぬ女性らしい応対の仕方だ。しかも決して恒子が悪者に見えないから不思議。・・・・女は怖い!
第二は恒子を通じて言わせている作者の正義感ぶり。
・だがその三輪は五億五千万円を魚住と山分けしている。そしてその事実が外部の人間である入江恒子にばれると、部下達にもみ消しをやらせ、それに必要な金も・・・・どうせ会社に払わせようと言うのだった。(305p)
・でもね、五億五千万円も社長さんと会長さんで横領しちゃ、いけないんだと思うんです。悪いことをなさったご当人は、なにもしないで平気でいるんでしょ・・・・・工藤さんは別ですわね。社長さんや会長さんにそう言う悪いことをさせたご当人だから。でもそう言う風にするとほかの者より出世なさるんでしょう。・・・・皆さんが努力なすっていらっしゃるのに、社長さんや会長さんは何もしていらっしゃらない。こんなことって良くないんじゃないでしょうか。・・・・(338p)
・不倫をする女性の気持ち(131p)
・ゴルフ場の造成費(213p)
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