死の谷から来た女  夏樹 静子


文春文庫

四国の珪石鉱山の爆発事故で家族を失った北村恵は、上京して、高級サウナの洗身メイトとなった。彼女は客でニヒルな好男子俵一敏と親しい。その俵の紹介で、巨億の資産をもつよいう老社長相庭宇吉郎の相手をする。相庭は俵共々彼女を養女にしたいと申し出るが、そのころから彼女の周辺に暗い影が漂い始める。
相庭の出張に合わせて、俵と彼女は四国に飛び、廃鉱となった昔の珪石鉱山を訪れる。東京に出る前、この鉱山で恵の父は不振な死を遂げたが、死体は発見されていない。鉱山の売却話があったが、彼女は「父の思い出があるから。」と申し出を断った。ところが今回訪れると、鉱山には不思議な掘り返し跡。
やがて珪石鉱山跡の崖下で、男の変死体が発見される。土井元次と言うヤマ師であった。
得体のしれない憂鬱に襲われ、恵は客の酒匂弁護士に相談する。酒匂は話がうますぎることを指摘、それならあなたも相庭のことを調べて見ればいい、と提言する。しかし俵を通じて調査した有名な調査会社「国際データリサーチ」の調査結果は相庭に問題ないことを明らかにしていた。
やがて養女と言うことになるが、調査結果にもかかわらず、相庭の運転手と顔を合わせたことがない、相庭の預金通帳はほとんどから、相庭の役員を務める会社は存在しないなど不振な点が次々に浮かび上がる。そして俵から相庭が癌の末期である、我々はやがて大金持ちになると聞かされる。
さらに父の元で働いていた塩尻という男が池袋の公園で死体となって見つかった。警察は彼女の塩尻死亡に関するアリバイをしつこく尋ねてくる。
恵は俵が相庭の財産を横取りしようとしているかなどいろいろの推測をたてる。そして油壺のヴィラでの対決。ようやく悪人どもは仮面を剥がし、今までの経過、犯行の目的を明らかにした。恵に危機がせまる…・。

「シンデレラの夢」の夢の裏に隠された罠と野望。まさにカトリーヌ・アルレーの「わらの女」を彷彿させる作品である。最後に恵自身の犯罪が暴露されるところが面白い。
020629