紳士同盟           小林信彦


新潮文庫

 プロデユーサーの寺尾は、女優浅墓ひな子の浅墓な発言がもとで、突然テレビ局を首、とんでるカミサン真智子には離婚のあげく、莫大な慰謝料を請求される。仕方なく育てた女優に逃げられ大金が必要な旗本プロダクションの旗本と組むことにする。そこにサラ金に追いかけられた売れないタレント清水が転がり込む。3人が必要な金は2億、どうしようと悩んでいると秘書の長島が、おじいちゃんに教えてもらってコン・ゲーム、つまり詐欺をやってお金を作りましょう。おじいちゃんは昔ならした名うての詐欺師。

 まずは、銀行の偽造した振込依頼書を行員間の受け渡しボックスに忍び込ませて1100万円、栃木県の医者宮田老人に、美人女優山形久子に逢わせてあげる公開番組を作ると言うことで3000万円出させる。さらに現在テレビ局が使っているテープは2インチものだが、音声多重放送時代の到来と共に1インチテープものがふえる、ところがその編集スタジオがない、作りたいが金が足りないといい加減な話をでっち上げ、それらしい会議まで見せて、6000万円ださせてしまった。

 そして最後の大芝居、後1億。ところが車椅子生活をしていた長島老人がとうとう亡くなってしまった。どうすると悩んだが、遺言で目標は映画狂の丸角商事副社長橋爪正79歳、老人が考えていた筋書きも明らかになった。米国の不遇に終わった名監督ルイス・アルトンが最後の映画を作るために、あと1億必要なんです。そしてそれらしいスタジオをセット。見学を終えた後、橋爪とルイス・アルトンの会見が終わり、これで1億円はあっさりいただきと思ったが、橋爪は疑り深い。社長が出てくるのが筋だ・・・・考えてもいなかった展開、さあ、どうする!

 奇妙な4人と詐欺名人の老人がおりなすスマートでユーモラスな本格的コン・ゲーム小説。作者は、テレビ界の出身のようで、ギャグがモダン、上質の関西漫才でも聞いている感じ。また最後に話し全体が闇市時代の長島の橋爪に対する復讐談に仕上がっているところも、話としてまとまりがよい。

 読み終わって私的な感想。法外な金を巻き上げながら、被害者に不満を言わせない、という条件なら、普通の商売でもそれらしいのが随分横行しているなあ・・・・。

・コン・ゲーム道の要諦は、相手の一瞬の混乱を利用し、おのれのプラスに転化させることだ。(126p)
・コン・ゲームにおいては「初めに被害者ありき」さ。・・・・被害者が弱点を持っていなければ成立せんのだ。・・・・ぶすが美人に成りたいと願うから、美容整形詐欺が成立する。一攫千金を夢見る男、結婚したくて溜まらない女・・・・(167p)
・美術館が贋作と分かった名画を盗ませる。(215p)
・寺尾は、先刻から、室内に渡辺淳一的世界を作りあげよう、と心がけているのだった。・・・・しかるに、なにごとぞ、二人の会話は、一億、ギャハハ、といった、強いて形容すれば往事の筒井康隆的世界に入りつつあるのだ。(291p)
・いまの日本で、闇市時代の丼勘定がつづいとるのは、映画界だけだと・・・(352p)

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