光文社文庫
江戸川乱歩の未発表作品「白骨鬼」が発表された。
昭和9年、南紀紀州白浜、私は景勝三段壁から身を投げようとして男に救われた。麓の旅館に腰を据えると、私を助けてくれた男は、同じ旅館の離れにいる塚本直で、夜な夜な振り袖を着ては惚けたように月を眺める月恋病の御仁という。ところが翌日三段壁で首を吊っている直が発見されたが、目を離したすきに死体は消えてしまった。しかし状況から海に落ちたのだろう、と言うことになった。その夜、私は金満家父親の塚本大造と直と瓜二つの弟塚本均にあう。
あれは自殺ではないかも知れない、と考えた私は詩人の萩原朔太郎とともに捜査に乗り出す。北野雪枝は均の婚約者であったが、東京であまりのその荒れた生活ぶりに驚き、直を恋するようになった。彼女は自分が直にせまったため、彼が良心の呵責に攻められ、自殺したのかも知れないと言う。しかし萩原はゴム毬を使って、死んだふりをする方法を私に示し、直は生きているかも知れないと示唆する。
平成2年、夢幻という小説一作で有名になったが、いまは書く能力を失った細見辰時は「白骨鬼」原稿を持ち込んだ若い西崎と対面した。問いつめられて西崎は実は義理の祖父の「我が犯罪捜査記録」にあった事件をを、ほとんどそのまま「白骨鬼」に採用したのだという。塚本直と均は記録では小松利忠と利人であった。それを知った細見は西崎に版権を譲れ、と頼み込む。しかし西崎は細見のずるさに驚き、断る。
私と萩原が捜査を続けていると、白浜で直らしい白骨死体が見つかった。これで事件は解決か。しかし私は直が生前自動車事故を起こしたが、骨には傷が残っていない事を指摘し、直は死んでいないと指摘する。直は自殺のお芝居をした後、双生児の弟を殺したのではないか。そのころ死体を検死した野崎医師が死んだ。二人はその死が他殺の疑いがあるとして家人の協力を得て、芝居を打つ。もし直の犯行なら、真実を知っている医師に生き返られては困るから必ず襲ってくるはずだ!!。ところがあらわれたのは・・・・。
再び、平成2年、病院の細見辰時は西崎の訪問を受ける。西崎は小松利人、塚本均、細見辰時の秘密を解いて、細見を驚かせる。細見は白骨鬼のタイトルを替え、さらに新しい解釈を加え、自分の名で最終回として発表することにこだわる・・・。
なかなかの本格推理小説。乱歩の「化人幻戯」にあるような一人二役、双子の入れ替わり、Aが犯人と断定した物が見ようによってはBが犯人でもすべて説明できるような犯罪などを使ってどんでん返しがくり返されている。それらの知識があったとしても、犯罪の経緯が予想外のものであるところが良い。
・二つの団子坂(167P)
・スナホリムシモドキに取り付かれると、わずか一晩で、体中の肉を食いつくされると言います。(203P)
・黒岩涙香「白髪鬼」(233P)
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