葬列 小川 勝己


角川書店ハードカバー

「白いマンション」にあこがれていた三宮(さんのみや)明日美は、マルチ商法などを試みるがうまく行かず、1Kの小さなアパートで車椅子の夫昭久を守りながら、アベックホテルで働いている。落ちぶれた昔の仲間葉山しのぶが「一緒に現金輸送車を襲わへん?」と持ち掛けてくる。相手にしなかったが、実際の銀行強盗に遭遇。これが縁でしのぶと同じ事を考えている藤波渚と知り合い、同意してしまう。
木島史郎は暴力団九條組組員だが、意気地がなく、オシボリ屋などをまじめにこなす真面目なおよそ暴力団らしくない。妻に逃げられ、一人娘のももこに毎日弁当をつくっやり、さらには池上範子のピアノ教室に通わせている。
九條組は海渡組と共に朝倉組の傘下にあり、その朝倉組は鹿沼組と共に石黒組の傘下にある。石黒組のNO2大前組長が死亡し、跡目を争って朝倉組と鹿沼組が対立、互いに血で血をあらうこう抗争が始まった。そんな時組に呼び出された史郎は「タマ(鹿沼組組長)を取ってこい。」と命じられた。
組長に重宝がられたか、銃の扱いなどを教えられ、武器の秘密の隠し場所も知ってはいたが使う機会はなかった。しかし、脅され拒否するわけにも行かぬ。勇を鼓して出かけるが、銃を落として大失敗、慌てて逃げ出すが、その隙に誰かが鹿沼組長を射殺した。自宅に戻れば、ももこは預けた池上一家と共に消え、後は血の跡。九條組と警察双方に追われていると知り、藤波渚のもとに逃げ込み、彼も結局銀行強盗に加わることにする。
しかしよく考えると、警察の行動が意外に早いと予想され、どうも危険、それならと数億の大金があることが分かっている九條組を襲うことにする。史郎は娘の仇を必ず取ってやると人が変わったようになる。まず三人がアジア人を装い、被害者を装った明日美が手引きして、アベックホテルを経営する街金を襲い、1000万円あまりを強奪する。これは渚が帰国子女で英語が良く出来たために成功した。(出入り口の扉の取ってをバーナーであぶっておいて逃走する方法が面白い。)
いよいよ九條組襲撃。この際の一味の準備ぶりが度肝を抜く。武器はコルトガヴァメント、コルトM1911A1、ベレッタM9、コルトDEダブルイーグル、コルトM16A2、ベネリM3スーパー90、S&WM10最後に三丁のボウガンまで用意する。頭の天辺から足の先まで防弾防刃チョッキで身を固める。さらに特殊防弾シールド入りブリーフケース。内装屋のトラックを奪ってさて出発。
後は主婦やダメやくざの混成チームでこんなのありか、と言うくらいの銃撃戦。組員の撃つ弾は撃てども撃てどの防弾チョッキに防がれて効果なし、次々と倒れて行くことになる。ただ史郎だけが金庫を開けたときに、中に潜んでいた組員に直撃され、即死。しかもハードボイルドタッチはなお続き、三人になったとき皆が考えることは同じ。二人いなくなれば残りは全て私のもの。最後に生き残った暴力団員が犯人をかぎつけ銃をつきつける。
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本間は反射的に、腰のホルスターに手をのばした。
一瞬早く、***が後ろに組まれていた両手を突き出した。
二丁の拳銃。」
格好いいねえ、この終わり方。

前半のダメ暴力団員木島史郎、車椅子の夫を守りながらアベックホテルに勤める明日美の造形はまさに桐野夏生の「OUT」を彷彿とさせる。史郎の殺人ぶりなど読んでいて思わずにやりとしてしまった。
しかし後半の活劇は何と言ったら良いのだろう。現実的か、納得性があるか、いくらタイトルが葬列でも人を殺しすぎると言われると首をかしげる。大体今まで銃を使わなかったものがどうしてこんなに変身できる!しかし、面白いか、と言われれば大変面白く読者をして一気に読ませる力がある。劇画的で、こうなると殺人の美学だ。それにマルチ商売、アベックホテル、暴力団抗争など現代的テーマをうまく扱っていると言う点でも素晴らしい。読み終わって「小説はまず面白くなければ行けないんだなあ。」と感じた。

・ 銃で殺傷させるためには・銃弾頭部の鉛を露出させれば良い。鉛が変形し相手の体を貫通しにくくなるから。(254P)
001017