講談社文庫
主人公のプロの泥棒は、東京の郊外のとある住宅に忍び込もうとして落雷に遭い、一件隣の家に落ちてしまった。気がつくと彼を見つめていたのは、十三歳の双子の哲と直。なんと彼らの父母は、それぞれ恋人を見つけて出ていってしまった、お金がなくて困ってる、おじさん、お父さん役をやってくれない?というのだ。こうしてまるで父子のような奇妙な3人の家庭生活が始まり、起こる事件を奇妙な会話と共に語る、と言う筋書き。物語のユニークさもさることながら、記述のはしばしに作者の優しさが現れているところが素晴らしい。
ステップファザー・ステップ
とにかく稼がなければいけない、お隣は遺産が入ったばかりの未亡人ということで早速忍び込む。ところがやけに多い鏡と電話が見あたらないという変な家。実は当主はおしで読唇術で会話をする必要があったのだ。そこに引っ越してきたばかりで周囲に彼女の顔が知られていないのをいいことに、悪い女が彼女を二階に押し込んで、彼女になりすましていた。
・ドルリー・レーンと87分署キャレラの奥さんは耳が不自由。(58p)
トラブル・トラベラー
倉敷をまねた群馬と栃木の県境にある暮志木に行った哲と直が置き引きにあい、助けに行き、贋作師の画聖と遭遇。おりから警戒厳重な市の小原美術館でわずかな時間の停電と発砲騒ぎ。
実は金に困った市長の息子が、わずかな停電を利用して、名作「陽光の下の狂気」を画聖の作った偽物とすり替えたのだった。
ワンナイト・スタンド
授業参観に父親として出席すると、なんと直と哲が入れ替わっていた。ところがやっかいな民事訴訟に巻き込まれた美人の灘尾先生も妹と入れ替わっていた、という話。指についていた宣誓用のインクのシミで気がついた。
ヘルター・スケルター
直の盲腸入院騒ぎの直後、近くの湖から車が引き上げられ、中には男女の白骨死体。身元不明だが、主人公は実は双子の両親ではないかと心配になってくる。すると双子と両親はどうして離れたのだろう、ひょっとしたら双子が殺したんじゃないか、とすれば毒殺に違いない、と考えはエスカレート。しかし全くの誤解。二人は暴走族で、ひき逃げ事故を起こした末の事故でありました。
ロンリー・ハート
3人一緒にお正月を過ごすべきかいなかの話が発端で、文通をしていた有閑マダムが、相手から「亭主に知られたくなかったら金を出せ。」と驚かされた、金を払うが取り返してほしいという相談に巻き込まれる。恐喝した見知らぬ男は事故死したが、その顔を見て驚いた。なんと亭主だった!
・子供について・・・・もしも前世というものが本当にあって、たとえばあなたが、そこでは鳥だという事がはっきりしたなら、あなたは鳥を撃ったり、鳥を籠に閉じこめたりすることは出来なくなるだろう。(215p)
ハンド・クーラー
銀行員を父に持つ城ヶ崎みやびちゃんの家に時々投げ込まれる山形新聞。そして1週間後にパパが何者かに襲われ重傷。しかし主人公の活躍で分かった。新聞を投げ込んでいたのは矢野運送のダンプ運転手、彼は少し前に銀行が手形決済を1時間待ってくれなかったために倒産した会社の社長。その時の担当者が城ヶ崎氏。新聞は手形の額面が990万円、山形新聞の郵便番号が990だったのだが、城ヶ崎氏は気づきようもない。
・私設私書箱の利用(243p)
・だから、いいのだ。お互い、淋しいとき淋しいと感じる人間同士の関係を優先させた方が、世の中楽しくなるに決まってる。(246p)
ミルキイ・ウエイ
久しぶりに食事をしようと双子を訪ねると、見知らぬ男がいて「父だ。」と名乗る。ああ、おれの役目もおしまいか。ところが留守電を確認してみると哲と直は別々のグループに誘拐されていて身代金の要求。あの見知らぬ男は誘拐犯。画聖に頼んで偽札つきびっくり箱などを用意し、二人を取り返す。本当のお父さんから本当に連絡があった。「そのうちに一度帰りたいと思っている。」・・・・それまでは、流れのままに気楽にしていこう。