砂の器            松本 清張

新潮文庫

JR蒲田駅操車場で、顔をつぶされた老人の死体が発見された。手がかりは前夜連れの男と話していた「カメダ」しかなかったが、届け出により、鳥取県の亀嵩なるところで刑事をやっていたことのある三木であることがわかった。
今西刑事は列車で紙吹雪を撒き続ける女についての随筆を読み、調査したところ、女は成瀬リエ子といい、血のついたシャツを切って、撒いていたのだとわかった。共犯者である。しかしリエ子は突然睡眠薬自殺をしてしまった。リエ子は小さな劇団に属していて、彼女を慕う宮田を問いつめたところ、宮田も翌日心臓発作で死んでしまった。
このころ”ヌーボー・グループ”なる新進芸術家たちが捜査の対象に浮かびあがってきた。辛口の評論で知られる関口、モダン音楽家の和賀、画家、建築家などである。和賀は財閥の娘と結婚とあって、張り切っていた。以前、関口は和賀を激しく批判していたが、最近妙に賞賛する動きを見せていた。
刑事は、特殊な波長の音を出してスリを撃退する方法があると聞いて研究を始める。同時に三木が戦前ライ病患者を助け、その子秀夫を養育しようとしたが、出奔したことを知った。そしてついに戦争で混乱した戸籍を追求するうちに、秀夫が和賀であることをつかんだ。やがて関口の恋人恵美子が、流産した後、不振な死をとげた。
幸運の向いてきた和賀は、突然現れた過去を知る三木を殺し、宮田を自宅の音響室に連れ込み、高周波でおかしくさせ、死に至らせたのだった。関口は和賀に助けてもらって妊娠した恵美子を処分したのだった。
今西刑事等の犯人追及は鮎川哲也の鬼貫警部ものを思わせる。ただこの作品は刑事サイドとと犯人サイドの行動を交互に書き、次第に真相が判明してくるという手法をとっている。その意味で本格推理小説の書き方とはやや趣が異なる。それでいて読者に一時は関口一人が犯人と思わせるから、謎解きのおもしろさも備えている。方言や最近の音声学の研究もたくもに利用されており、興味深い。
・捜査本部の解散(上150p)
・東北弁の研究(上263p)
・血液のベンチジン試験、ルミノール反応試験(上320p)
・大塚の東京都監察医務院(上359p)
・戦災地でデ戸籍地域ノ区役所、各県庁ガ焼失シタ場合ニハ、戦後昭和21年カラ22年ニカケテ戸籍再届出ヲナスモノトス(下54p)
・追完届(下359p)