スペードの女王   横溝 正史


角川文庫

金田一耕介が、彫物師彫亀の妻から受けた相談は以下のようなものだった。夫は客から依頼で、目隠しをされてどこかに行かれ、眠っている女の股のきわどい内側に、依頼した女と同じように、小さなスペードの女王を彫ってくれと頼まれる。仕事を終えて帰されたが、しばらくして車にはねられて死んだ。しかしその状況が事故ではなく殺されたように思える、調べてくれと言うものだ。
鎌倉で女性の首なし死体が見つかったが、彼女の股のきわどい内側にはスペードの女王が彫られていた。この記事を聞いて週刊誌記者の前田浜子はなぜか恐れおののいた。
等々力警部の調査によると「陳は日本に流入してくるヘロインの80%を牛耳っていた。彼は一昨年死んだが、その妾がスペードの女王と呼ばれる女で同じ特徴があることが分かっている。しかし彼女の名前がわからないどころか、見たものもいない。」
やがて死体の身元が判明した。赤坂に岩永久蔵の経営するX.Y.Zというナイトクラブがあるが、女給神崎八百子ではないか。神崎は岩永の愛人でもあったが、岩永は姿を消し、やがて女の寝室で死体となって見つかった。
謎が謎を呼ぶ。首なし死体で自分を消そうとする女、強大な麻薬組織をのっとろうと暗躍する謎の男…・・。

入れ墨と首のない死体を組み合わせたトリックが非常にユニークだ。この作品は昭和35年6月に書き下ろし長編として刊行された。同じ様な設定に高木彬光の刺青殺人事件があげられる。この作品が書かれたのは昭和22年、作者は27歳であった。「スペードの女王」はこの影響を受けている、と考えられなくもない。
010416