講談社文庫
実業家丹波竜造は、ヨットで大島に向かう途中遭難、行方不明になってしまった。顧問弁護士が所持する遺言書に従い、財産はほとんど長男の健太郎が継ぐことになった。ところがその健太郎が宝物室の中で心臓発作により死体となって発見された。
そこで健太郎の妻、子供たちが遺産を相続すると思われたころ、貸金庫の鍵が見つかり、日付の新しい第二の遺言書が発見され、主人公りえの母で後妻の千春が、受け継ぐことになった。彼女は竜三の子どもを宿していた。一族の嫉妬とねたみ・・・・。
そんな中、今度は庭の祠の中で憎まれ口なら負けない長女の末子が殺されていた。しかも犯人と障子に写った末子の争う様子をりえ等が目撃していた。白岡署の黒星警部等は健太郎の子でバイクを乗り回し、権利意識の強い秋彦を重要参考人として連行するが決め手がない。その秋彦のバイクの事故死。犯人から「次はおまえだ。」の殺人予告状が送られ、一族は恐怖のどん底に追いやられる。
ボートの中で書いた第三の遺言書がみつかり、財産の受取人はいっしょに遭難した新田ひろみになっていた。ひろみが死んだとすると財産は再び一族で分けるということになる。
しかし長い殺人劇も、末子の子の涼のガス事故死と夫の神谷隆二の逮捕で一件落着に見えた。ところがそれも誰かをかばっている様子。ここから作者一流のどんでん返しが始まるが、そこは読んでのお楽しみ・・・・。しかし、結果として財産を受け取る遺贈される段階でよく調べてみると丹波竜三は破産状態であった、というおちが効いている。
宝物室の殺人は、むいた電気コードを密室に差込み、外から発電機の音で混乱させ、被害者に触らせてショック死させるよ言うもの、末子殺人は幻灯で障子に殺害場面を映し出しながら、犯人はおぶさられて犯行現場に行ったというところが味噌。章が終わるごとに挿入される犯人がワープロうちの告白状を作る場面が緊張感を盛り上げている。
殺人事件の進行とともに、次々と遺言書が現れ、財産をめぐって登場人物が右往左往する比較的古いタイプの作品だが、無駄を省いた簡潔な骨太な書き方が魅力である。事件のねらいが最初の数ページを読んだだけで明確になる点もわかりやすくていい。ただ最後のどんでん返しは少しやりすぎで、犯行との関係が論理的に破綻する様にも思えた。
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