創元推理文庫
横溝青史「悪魔の手鞠歌」の本歌取りであるが、横溝の作品全般から引用している。ただ書き方は原作のようなおどろおどろしさはなく、コメデイ風。
県の同好会がだしている「郷土の民俗」という雑誌に矢鱈放言なるものの「八鹿村子守歌」考なる論文が載った。八鹿村は県北にある秘境の地で皆おしゃべり好き、八馬鹿村とも呼ばれ、近く水没してダムになる予定、反対派と受け入れ派が鋭く対立している。村は中央の道を挟んで梅のお大尽と竹のお大尽の二家が実権を握っており、受け入れ派の中心は梅のお大尽こと小梅佐兵衛。
歌は「竹のお大尽は銭こが好きよ、日がな一日勘定して、銭箱抱いておっ死んだ」ではじまり梅のお大尽、獄門寺の和尚の死を二番、三番で予言している。その予言に従ったのか、最近、竹のお大尽が賽銭箱を抱えて死んだ。
さえない探偵キンダイチは、佐兵衛から身辺警護が依頼され、出向くことになった。村の入口の鬼首峠で、おりんとなのる老婆にであう。左兵衛にその話をすると、青くなり、30年前に死んだはずだとわめき、彼女を捜すことを命じられる。
歌の通り獄門寺の和尚が、沢ギキョウの根に含まれる毒を飲まされ、三本指を示すダイイインングメッセージを残して死んだ。子守歌にはさらに医者と錠前屋の死を予告している四番と五番があることが分かった。その予言通り、キンダイチは柿の木に首をつった医者の死体を見つけ、鬼火橋のたもとで荷車(ガータ)の下敷きになって死んでいる錠前屋を発見した。
ガータなる言葉は地元では河童も意味していたことから、キンダイチは犯人の範囲を特定し、さらに車が竹屋敷から盗まれ、川の流れに沿って運ばれた事を発見する。矢鱈放言の正体が分かり、あのおりんの幽霊出現、ついに左兵衛が発作で死んだ。
おりんの消息、30年前の事件を追跡したキンダイチはついに事件の発端が、おりんの失踪を種に和尚が佐兵衛を強請っていたことにあると発見した。困った佐兵衛が和尚殺害を企てたのだが、おりからのダムによる水没騒ぎ、それを利用して日頃の恨みを晴らしてやろう、という輩がどんどん出現した!
それにしても随分たくさん引用した物。おりんは亀の湯のリカだし、恩田はそのまま、和尚は多々良老人、沢ギキョウはそのまま等々。横溝作品をもう一度読み直してどこに何が引用してあるかを調べるのも一興か、と思った。
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