天使が消えていく     夏樹 静子


光文社文庫

作者の処女作と呼べる作品。大きなトリックはないが、子供に対する限りない愛と献身をテーマにし、丁寧な取材、工夫された物語の進め方と相まって感動的な作品になっている。
婦人文化記者砂見亜紀子は、九州医科大学原木教授をインタビューした際、重症心臓疾患児ゆみ子にで会う。彼女は早期の手術が望まれるが、母親に金がなく、心配されていた。そんなとき匿名氏からの寄付があり、手術を受けることが出来た。しかし完治したゆみ子を迎えたホステス神崎志保は、余計なことをすると言うばかりに冷たい。心配になった亜紀子はゆみ子を頻繁に訪ねるようになる。
ホテル玄界の一室で電気販売会社支店長谷口健策が殺された。4人の商売女が容疑者として上がったが、皆、アリバイはあるように思われた。
ホテル玄界は蟻川國光が経営しており、後は甥で支配人をしている楠信一郎がいるだけである。ところが、その蟻川が、配達された牛乳を飲んで死亡した。青酸カリ中毒であった。牛乳が配達されるころ怪しい女が目撃されたが誰とは分からない。
蟻川の先妻の娘文子は別府で小さな建設会社を経営している伊能雅範に嫁いでいるが、会社は経営が思わしくなく彼の犯行も考えられた。
そして「赤ん坊が殺される。」と妙な電話をかけてきた後、亜紀子が駆けつけると、密室状態になった自宅で志保が睡眠薬を飲んで倒れていた。簡単な遺書まであるが、彼女は何か引っかかる。このときから亜紀子と警察の捜査が並行して行われるようになる。
それぞれの事件はどう絡まって行くのだろうか。やがて谷口殺しの4人の容疑者の一人が偽名を使った神崎志保らしいことが判明し、事件は次第に大団円に向かって行く。
020508