大和書房ソフトカバー
「アリスの国の殺人」などと同様、書き方に工夫を凝らしたり、天使が犯人を自由に変えてしまったりするコメデイタッチの作品。とはいえ、感覚の新しい記述と会話はすばらしく、読んでいて、にやっと笑うこと請け合い。
紺野大吾の弟子でダンデイなことで有名な青江七郎は、大劇魔団を結成、その第一回公演は「天使の殺人」と決まった。ところが、主役もシナリオも決まっていない。
やっと主役の北風みね子役にはオーデイションに応募した東田千春、西音寺レイ、南由香里の中から選ばれることになった。ところがこの三人、有名になれるとあって、みんな夢中。哀島なる島に撮影会にロケに出かけたのだが、それぞれ、運転手やらガイドやらをオイロケ作戦で誑し込み「殺してほしい人がいるの。」と対抗馬の抹殺を計画する。
女優たちの殺人歴の告白が何ともいえず面白い。釣り橋での殺人、男のせいにしたその妻の包丁殺人、ツミの歌(コノ手軽な十字架、コノ習慣性麻酔剤、コノハートに押された血色の印鑑)、トイレでのおばあさんショック死殺人等。
さて東京には、哀島でだれか女優が殺されたとの報が入る。「どうなっているのだ。」と青江は、お付きの赤木歌右衛門等と一緒に出かける。
一方島では嵐の日に互いに殺意を秘めて三人がバスツアー。これを見て天使たちは、誰を死んだことにしたら一番つじつまが合うかを議論しだした。結局、ひとつづつ実践してみて、由香里にしよう、と決まった。ところが最後に中心になる青江が死んでめちゃめちゃになったえしまった。
・でも、舞台の上では魅力たっぷりの女を演じて見せる。しっとりとした芸者、バイクで突っ走るギャル、青酸カリをバックに入れてる殺し屋の女。特に私って推理劇が好きなの。二重にも三重にもお話が絡み合ってて、登場人物の誰が正しいことを言ってるのか、うそをついてるのか分からない・・・そんなだましだまされつつの物語って、演ずる方も緊張を強いられるでしょう。そんな芝居をしてみたいな。(109p)
・愚かな人間は、真実はただ一つと思い込んでいます。ところがどうして、真実はタマネギなの。(215p)
・真実の追究は、実り少ない仕事です。それくらいなら、真相とかならずしも一致しなくとも、多少無理矢理でも、犯人をまず指摘すべきですよ・・・できの悪い探偵小説と同様、真相は、作者だってきっちり考えたわけじゃないんだから(215p)
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