双葉文庫
衛藤良丸は、戦争中の体験を元に「東干」という小説を書いたが、その作品が元で戦後米国の日本監視機構(G2)に呼び出され、昭和56年突如ウルムチを訪問することとなった。
「東干」のあらすじ・・・・昭和8年、満州を占領した日本は、抵抗する蒋介石軍の背後を脅かすため、奉天鉄道ホテル社長令嬢犬丸由利を、タクラマカン砂漠に勢力をはる回教漢民族集団「東干」総帥馬仲英将軍に嫁がせることとした。花嫁は、嘉峡関で花婿に引き渡される予定だったが、馬将軍一派はソビエトと組んだ盛世才一派に対抗すべく、天山山脈奥地に移動していた。そこで一行は、由利を迎えの馬希戒に渡し、付き添いに髭の立派な衛藤上等兵だけをつけて引き返した。苦難の旅の後、馬仲英に出会うが、軍隊は崩壊直前、彼は単身ソビエトに降伏してしまった。絶望した由利は、衛藤に体を与えたが、馬仲英に変わった馬希戒に求められその妻となった。
由利の恋人アーサー・カマルの手記・・・ニューヨークで、由利から馬希戒の妻となったと知り、あいたかったが、ちょうど秘密任務を帯びて天山山脈の奥地に行くことになった。彼は現地で案内人二人を雇い、苦難の末、復活した馬希戒軍に潜入、由利にあうことができた。しかし、その後、馬希戒軍もソビエト飛行軍団のために壊滅し、由利はアメリカに戻り、カマルと結婚した。
実はカマルの秘密任務が天山奥地のウラン鉱山の確保で、雇った二人が姿を変えた衛藤とソビエトスパイであったため、衛藤がG2に呼び出されることになったのだ。
再度呼び出されてウルムチに飛んだ衛藤は、1年前夫に死なれ、自身も癌で後一月と宣告された由利・カマルと再会する事となった。
著者の原体験が生かされており、天山をらくだで旅する苦しい旅の臨場感が素晴らしい。