東京駅で消えた     夏樹 静子

新潮文庫

曽根紀和子の夫、寛は大手総合建設会社・帝都建設の取締役を勤めているが、帰宅途中の東京駅で見かけられたのを最後に消えてしまった。無断外泊などしたことのない曽根の行方を、紀和子が曽根の部下と一緒になって捜すと、やがて普段使われない駅の霊安室で、死体で発見された。

銀座のクラブ<しおん>の女給加地本由美がステーションホテルを最後に姿を消し、非常階段で死体となってみつかった。

藤井久乃の茶のみ友達で国鉄をリタイヤし今は悠々自適の身の合屋雄之助が東京駅の床屋に散髪にいったのを最後に姿を消し、地下四階コンコースの倉庫の中で死体となって発見された。

三つの死体はいづれもナイロンストッキングで首をしめられていた。そしてその死の影にうごめく謎の女・・・・・。

寛が「コンクリートの配合を間違えた。」といっていた話は次第に明らかになり、24年前の新幹線工事のやり直し事件につながった。工期半ばにしみが出てきて、工事を請け負った帝都建設はやり直しを命じられた。その責任を取らされて、所長・高辻義一と工事主任の曽根寛がとばされた。ひきのある曽根はしばらくして日のあたる職場に復帰したが、高辻は自殺未遂をはかるなどして返り咲かなかった。

最近その高辻が失意のうちになくなったことで触発された娘の潤子の犯行、との見方をとった。潤子はツアーコンダクターをしている。ところが彼女もまた姿を消し、やがて身障者用の地下通路で首吊り死体となって見つかった。当局は加地本由美殺害動機があいまいなものの彼女が犯人で、追い詰められて自殺したとの考えに傾斜し、捜査体制を縮小した。しかしもう一つ裏が・・・・・。

生コンは移動中にミキサー内部で水と混合され、工事に適当な硬さになるが交通渋滞で時間がかかりすぎたりすると使えなくなってしまう、というのは初めて知った。丸の内側と八重洲側を結ぶ通路が7つもあり、「車椅子の道」「天皇の道」「死体の道」などもあると知って驚いた。

ただ、話として考えると、殺人事件が4つ提示され、その関係を過去の事件にさかのぼって解き明かす、というパターンと考えられ、やや面白さにかけるような気がする。

020928