講談社
この作品を高村薫の「レデイジョーカー」に続いて読んだ。どちらも現代の重大な社会テーマに焦点をあて、小説化し、成功しているのだけれども、真保氏作品の場合、アニメーションのプロであるせいか、プロットがよりドラマテイックで変化が激しい。ただし、主人公の思想と言ったものはあまり見えてこないように思えた。エンタテイメントと言う点を主眼に考えているからだろうか。
公正取引委員会の伊田は、上司と対立し、奇妙な罠にはめられて退社、罠を仕掛けた地検出身の橋上に「自分は検察庁の特命を受けて、ODAの談合問題に取り組んでいる。ついてはマニラの高架鉄道工事に関して、大東プランニングの大須賀昌三率いる調査団とそれに群がる岩島建設などの動きを、コンサルタントの仮面をかぶって赴任し調査して欲しい。」との要請を受ける。岩島建設マニラには、大学の同期の遠山が赴任していたが、彼は現地の妻を得、クリスという子供を設けていた。
ところが着任早々、遠山の妻が殺され、来たばかりの大須賀とクリスが誘拐されてしまう。遠山と妻の縁者でCISのトーレス少佐に懇望され、彼はクリスを追い始める。幼児売買の話を追ってスールー島に渡り、ついに半死半生になったクリスを救う。そのころ身代金を払って大須賀が解放された。
事件は一段落と思った頃、今度は遠山と稲森が誘拐された。同じ一団が誘拐を試みるのもおかしく、裏に何があるのかを探ると、なんと自分を動かしていた橋上は、同郷の代議士の意の元に動いており、代議士の息子が幼児売春を試み、遠山の妻と女を殺してしまった。それを隠蔽するために稲森が、大須賀の狂言誘拐をはかった事が判明する。すると第二の誘拐劇は第一の誘拐劇で妻を殺され、娘を廃人同様にされた遠山とトーレスの復讐劇・・・・。
事件追及の観点からは、第一の誘拐劇に疑問が出たとき、すぐに一緒にいた娼婦を調べなかったかと言うところを疑問に思った。また第二の誘拐劇はすぐに狂言ではないかと推察された。
・そんなことはフィリッピンでは良くあることだ。自分の兄も弟も隣におばさんも幼なじみのボーイフレンドも、皆椰子の実が落ちるようにあっけなく死んでいった。貴方だけがつらいと思ったら大間違いだ・・・(175P)
・子供そのものを密輸の道具に使う。・・・子供の腹を切り開いてまで調べることはありませんからね。(340P)
・銀行管理職の子を誘拐し、支払い停止のプログラムを解除させてしまう。(464P)
・誰だって、フィリピンで誘拐されたはずの人質が、その間に日本へ行って人を殺してきたなんて思わないさ。(618P)