超人探偵    小林 信彦


新潮文庫

第〇話 ブルートレイン綺譚
私、星川夏彦(ワトソン役)、ジャパン・テレビのチーフ・プロデユーサーである。親友神野推理(ホームズ役)が香港で行方不明になって一年五ヶ月、一緒に乗ったゆれの多いブルー・トレインで起きた事件を思い出す。食堂でみかけた大男が三輪組組長三輪登で、一号車の私の隣部屋と聞いて驚いた。彼は目下須磨組に狙われていると言う。一号車と二号車の間にはボデイガードらしい男、四号車には怪しげな男。そんな状況の中、鍵をかけた三輪の自室から叫び声と警報ブザー。車掌が駆けつけると、三輪が血まみれの片手で下腹部を押さえて倒れていた。ところがボデイガードは落ち着いているし、凶器らしい短刀が二号車の一号車よりにあるトイレに落ちていた!おもむろにパイプをポケットに入れ、神野は問題は凶器だと言う。
第一話 帰って来た男
青山のアイスクリーム屋モナコの蛯原が、チェーンロックのかかった自室で隅田川の水を飲んで溺死していた!側には背広を着たマネキン人形と脚立。旦那刑事によると、蛯原は香港からの麻薬密輸の容疑をかけられていた!私は神野推理と再会したが、香港の地下組織の東京支部から命を狙われていると言う。隅田川の水で氷の円柱を作り、その中に人を押し込め、凍らせるという途方もないアイデアが面白い。
第二話 悪魔が来たりて法螺を吹く
RTVの松平という男が鈍器で殴られて死んでいた。お家騒動をリークした青野が疑われたが、アリバイがあった。同僚の宮崎が、犯行時間に青野とテレビでチャプリン映画をみていた、と証言した。泥酔していた宮崎をごまかすために時計を狂わせておいたのではないか、との考えは崩された。宮崎が見たのはビデオではないか、という考えも、放映されたチャプリン映画が未公開のものであることから、否定されそうになった。しかしあくまで青野が犯人と考える神野推理はさらに詳しく調べた上、青野にトリックを仕掛ける。(悪魔が来たりて笛をふく」)
第三話 神野推理氏の推理休暇
推理休暇中の神野のもとに旦那刑事が有名人のマンションをねらう怪盗618号の事で相談に来る。狙われたマンションはいつも芸能週刊誌で部屋の内部が宣伝されたものばかりと言う。そこで私と神野は神野の滞在している部屋とそっくりの部屋をホテル内に作り、超豪華な家具で埋め尽くし、それをテレビで紹介し、怪盗618号をおびき寄せることにした。
第四話 きみとともに島で
私と神野は、瀬戸内海の無人島に近い島に休養に出かけた。ただ1件のホテルには瀬戸組の幹部がボデイガードと共に宿泊していた。瀬戸組は須磨組と対立しており、その須磨組は隣の島で決起集会を開いていると言う。「明日まで命がもつかどうかの瀬戸際やさかい…・。」と言っていた瀬戸組幹部が密室状態の自室で酸欠で死んだ。睡眠薬を飲んで良く眠っていたため、プロパンガスが漏れだし酸欠になったらしい。自殺か、他殺か、それとも事故死か?。やったのは須磨組か?。
・寂滅為楽と虫の音きいて和尚飲んでる般若湯(162p)
第五話 大阪で起った奇妙な出来事

第六話 クアラルンプールの密室

普段大した作品も書かぬ放送作家原口が<推理ドラマ賞>を取った。しかし彼の作品はどうやら外国作品の盗作であるらしい。
彼の提案で同業の池田、茶本を誘い、私と神野の5人でクアラルンプールに慰安旅行に出かけた。弧を描いた廊下に面して隣り合う309号室に池田、311号室に原口、313号室に茶本が泊まった。その夜原口が自室で殺された。集合時間が7時で、彼は6時半にシェリーを注文しているから、殺人はその間に行われたことになる。しかしその時間、全員アリバイがあった。エレベータ前で廊下を監視している監視係りはその時間原口以外誰も見かけていない!
第七話 横浜1958
六月初めの夜、私はドラマの考証を頼むため、ギャンブル評論家梶野一平にあったが、彼が大学の同窓生浦野と知って驚いた。彼は莫大な財産を相続したが今は落ちぶれていて、脚光を浴びている神野とは大違いだ。彼によると「あの事件が人生を狂わせたと言う。親父が自室で殺され、部屋中が荒らされていたのだ。なくなったものはなかったが、親父が常日頃言っていた<緑色の金>だけは別だった。親父の信用していた須田工務店の親父は、親父の金を使い込み、訴えられていたから一番怪しかった。しかし事件当時私と飲み明かしていて一緒だったという明快なアリバイがあった。殺人現場は横浜、飲んでいたのは東京だ。」
神野と私がこの謎に挑戦する。飲みにいったバーと同じバーが横浜に作られていたかもしれない。飲んでいた東京の<浜松町>と言うのは横浜にもあった。疑問が浮かびあがり、やはり須田の犯行らしいことになった!それにしても<緑色の金>とは何だ?
第八話 ボガードになりたかった男
堀真佐子と名乗る女性が、私と旦那刑事のもとにやってきた。一週間ほど前に香港で買った猫の置物が実は「アンダルシアの猫」と呼ばれるもので2億円もするものと分かったが、誰かに盗まれた、探してほしい。仲小路と言う男から「アンダルシアの猫についてその存在を知り、電話で買い付けた。今日貨物船でその品が届くので取りにいってほしい。」相い矛盾する情報である。それを聞いて旦那刑事が堀真佐子を問い詰めると、次々嘘がばれるが、彼女は「私の躯であなたを買えないかしら。連れてって、その取り引き場所へ。」刑事は鼻の下を長くしてついて行き、良いことを。「マルタの鷹」のボガード気取りである。ところが現場に仲小路は現れず、しかも殺されたとの報。しかし困り果てて病床の神野を訪れて相談すると見破られてしまった。「ドッキリカメラでしょう!」(「マルタの鷹」)

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