裏金             清水 一行


角川文庫

角川文庫100点突破記念とある。それほど作者が多作であるという事を意味する。そのせいか、私が今まで読んだ同氏の作品と比べ、小説としての完成度が高いように感じた。
東京湯島のラブホテルに、アイダ建設の裏金を一手に管理する柏木部長と下請け会社の総務課員一谷京子が入った。まもなく隣室にアイダ建設上山副社長が到着し、上山と柏木の密談が始まるが、柏木は「約束を履行してくれない、しかも私を二度に渡って殺そうとした。」と上山を刺し殺してしまう。
第二章からカットバックになり、なぜそう言うことになったかが描かれる。ゼネコンは官公庁の受注をする際、談合しているが、その際落札業者は、他の協力業者に歩金を払う。それが裏金となって政治献金などに使われるのである。上山の信任の厚い柏木は、三年前部長にあげさせてもらい、部下の鈴木と共に総額数十億、当座の金だけで七、八億の裏金の管理に当たるようになる。
しかし最近金丸関連の捜査でゼネコンにも捜査のメスが入ろうとしていた。柏木は、上山に呼ばれ、当面姿を消すように命令され、逃亡生活を始めた。連絡役は一谷京子。しかしいくら姿を消しても居所が突き止められ、怪しげな男達が自分を監視していることに気づく。それのみならず二度に渡って殺されようとした。ここに至って柏木は、実は上山が自分を闇から闇に葬ろうとしていることに気づく。
上山と対決することになり、湯島のラブホテルで落ち合い、冒頭の惨劇が起きた。警察は、隣室のアベックが上山を殺害したところまでは分かったが、そのアベックが何者かは分からない。密かに鈴木のマンションに戻った柏木は「統括している副社長が死んだ現在、存在を知られていない、裏金を二人で分けてしまおう。」との結論に達する。