我らが隣人の犯罪       宮部 みゆき 著


文春文庫

読みながら本当にうまいなあ、と思った。主人公はごく普通に見える人間であり、日常身の回りに起こりそうなことを記述していながら、ミステリーの要素も十分という点が魅力だ。やたらに刑事が登場せず、それでいて好ましい方向にいつか解決して行く・・・・こういう作品はどうやったらまねられるのだろう。

我らが隣人の犯罪
主人公は中学一年の男の子。アパートの隣の女性の飼うスピッツがうるさくて仕方がない。スピッツを盗んでしまえと、おじさんが屋根裏から忍び込むが、隠し預金の証拠を発見。スピッツの方は合い鍵を使って入り込み、連れだし、よその家に預けてしまう。隠し預金を見つけたことでおじさんは強気になり、女性に電話、喫茶店で見事に金を奪ったが、中身は表だけが金のインチキ札束。ところがその後警察の手入れを受けたのは、反対側の田所さんの家。じつはおじさんは反対隣の家に忍び込んだのだ。じゃあ、隣の女性はなぜインチキ札束にしろ、用意して脅迫に応じたのだろう。残された犬の首輪を割いてみると、ダイヤモンドがころころ出てきた。

この子誰の子
雨の降る日、少年が一人で留守番をしていると、アカチャンを抱いた見知らぬ女が、飛び込んできて「お父さんはいないの。これは貴方の妹よ。」それを示すらしい写真が三枚。実は少年は人工授精で出来た子、女の夫がドナーだったが、事故で死んだ。夫が恋しい女は寂しさから少年とその父を訪ねたのだった。

サボテンの花
六年一組の子供達は、卒業研究にサボテンとのテレパシー交信を取り上げた。父兄や外の先生は顔をしかめたが、定年間近の教頭はそれを許す。発表の当日、子供達はトリックでテレパシー交信らしきものをやって見せ、大人を煙に巻く。そして、教頭の元に子供達が記念にサボテンから作ってくれたテキーラが届けられた。

祝・殺人
結婚式で司会者は、届いた電文の一つを見ると真っ青になり、破いて捨ててしまった。そしてその数日後、彼のバラバラ死体が発見された。頼まれた若い刑事が調べると、新郎の元女性が、それより一週間くらい前に通り魔にあって殺されていた。
実は新婦の家が素封家で、新郎は結婚するために元の恋人を通り魔に見せ掛けて殺した、しかしそれを知った司会者が、新婦の父に妹と結婚させろと強請った結果、怒った父が彼を殺した。ただ証拠となる書類の入った金庫の鍵が指紋識別によって開く装置だったため、ばらばらにして腕を利用する必要だった、と言うところが面白い。

気分は自殺志願
推理作家の海野は、ある時見知らぬ男から殺してくれと頼まれる。男はコックだが突発性味覚障害に陥り、シェフなどやめて本屋をやりたい、しかしオーナーがケチで応じてくれそうもない、死にたいと言うのだ。海野は男が伝染性のB型肝炎にかかっている、との手紙をオーナーに送り、男に新しい本屋を開店させることを承諾させる。