祥伝社文庫
ケビン・マクガイヤは、全米に知れ渡った大物ハッカーで、かって北米防空司令部のシステムにも進入したことのあるサイバー界の英雄だ。コンピュータ・セキュリテイの専門家笹生珪史のパソコンに進入し捕まるなど、逮捕歴五回。その彼の実力をイタリア系マフィアが利用しようとしている。
エリク・クレイスンは、500に近い特許を持つ発明家である。彼は出願から数十年たったサブマリン特許を突如浮上させ、主として日本企業に訴訟をおこし巨万の富を得ている。ジーン・ケアリは彼とタッグを組む美貌の女性弁護士で活躍しているが、一方で彼女はクレイスンが亡くなった時の権利の行方を注視している。
日本の特許庁は、笹生を中心にメーカーから二名の専門員を得て、クレイスンの身元を洗い始めている。クレイスンが実は死亡していて今のクレイスンは米国が国益優先のためにたてたダミーではないかと疑っているのだ。
世界のダイヤモンドシンジケート「DC」の総帥トマス・リッポルト卿は、世界のダイヤ市場独占維持に汲々としている。しかし特許の申請を受けながら公開されない秘密特許の中に人工ダイヤ製造技術があるとの情報を得、巨大企業体UEの総帥ジョン・エイカーズ等と協力してこの技術を何とか盗み出そうとし、特許庁にはスパイまで送り込んでいる。別にイタリア・マフィアの流れを組むロッコ・オラルフォもこの技術をねらっている。
米国副大統領ルース・ホーヴィングは、将来大統領になろうとの野心をもった男である。国防庁長官ジム・オルスンと組んで米国「特許法」の特異性を利用し、知的先端技術を確保することによって米国の優位性を立証し、将来の道を切り開こうとしている。じゃまをしようとするように見えるCIA長官ウオルター・ワイルと対峙している。
これだけの組織がそれぞれの思惑で行動しながら話が進み、やがてダイヤの製造技術に関する二つの特許が明らかになる。ロシアから盗み出しUEが出願し、秘密特許となったダイヤ製造技術および日本が持っているフラット・パネル・デイスプレイ製造にダイヤモンド半導体を応用する技術である。後者はいままさに盗み出され、米国に利用されようとしている!
日本側がクレイスンの館に忍び込もうとすれば同じ時期、ロッコ・オラルフォは彼を誘拐しようとし、これをねらってジム・オルスングループが動き、ケビンはパソコンから侵入をはかる、といった具合である。さらに影に隠れてインターポールが動く。
日本人で米国を舞台によくもこれだけスケールの大きな小説が書けるものと感心する。シドニー・シュルダンやジェフリー・アーチャーなどの作品に比べても見劣りしないと思う。現実の特許戦争をベースにしているが、この面における露骨な米国の国益追求姿勢とあいまって、冒険小説にありがちな空想的状況が少なく、いかにも真実らし見せているところがミソである。場景描写や時代の流れの把握が的確な事も、物語に真実さを加味している。
・ モーション・キャプチャー(297P)
・ 不純物としてボロンを含むダイヤは、青い輝きをもち、ブルーダイヤと呼ばれる。このタイプのダイヤは普遍的に用いられるシリコンよりも、遙かに良質の半導体としての可能性を含んでいる。(538より作成)
・ ダイヤモンド半導体を利用したフラット・パネル・デイスプレイ製造(548P)
・ 指紋による自動身元確認システムは一九八三年から開発され始めたのだし。歯科データ。デイスク・プログラムが開発されたのも一九八六年だった、とジェイは振り返った。すり替えは一九八五年に行われた。そして一九八七年位置決め特許がおりた。(589−90Pより作成)
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(参考)
この作品について、私の友人O氏からメールを頂きました。参考のために掲載します。
一昨年12月の知財協(日本知的財産協会)の建設部会で、服部さんを招待して講演を聴いたことがあります。その要旨を下記に記します。
「フィクションの目から」 服部 真澄(作家)
略歴:原子力企業のフリーエディター(取材を兼ねた編集記者)から
国際情報小説の作家
平成9年「鷲のおごり」 吉川英治賞
平成10年「ビールメーカー」
最近、福井の旧家を買って移築して住んでいる。
・イアン・フレミングは海軍情報部、ロイター通信、銀行、証券会社に勤務。
007(ジェイムス・ボンド)の作家
ボンドに対する悪の親玉プロフェルドは。情報に対する執着が強い。
元郵便局勤務で、国際電報の電文を盗み見て情報の売買を始めた。
・記事で一番大切なことは、事実をきちんと表現すること。
インタビューでは、聞いたままを書いたのでは駄目!!
言う方には「勘違い、美化」があり、聞く方にも「勘違い」がある。
編集者は、常に情報を疑って、何度も反芻する。
写真と説明文の照合には、常識が要る。
校正=文字のチェック、 校閲部=事実かどうかのチェック
・新しいメディア:ネットワーク、インターネットにおいて、個人が情報を
自分が記者になったように相手に情報を伝える。(誤情報に注意する)
クロスチェックを習慣付ける
正確な情報→→→→→有料、課金の方向?
ジェフリー・アーチャーのマードックをモデルとした小説は、ファクト80%、フィクション20%と作者が言う。
服部 真澄の場合「1割のファクト、9割のフィクション」
例えば、法制度を変えてみて「小学生の労働」を取り上げる。
フィクションの目で情報を見る。
フリーマントルのノンフィクション「産業スパイ」を種本にして「にせものビジネスの本」を書いた。
・ベストセラー「鷲の驕り」は日米間の経済紛争/特許・通商について
材料は、1995年秋 の日経の記事・・・CIAの生き残り
1995年文芸春秋11月号・・・各国間の贈賄、不正取引をCIAがねらっている。
1995年10月 「日米自動車紛争」
6月 CIA盗聴事件
日本は、経済的なデータ収集の能力に大きな疑問がある。
特許を分りやすく表現するために、狂言回しとして発明王
モデル:「レメルソン」(第二のエジソン)
・米国の特許の歴史
米国独立時、サミュエル・スレンダーは、英国の繊維機械の知識を米国へ持ち出し「米国産業革命の父」と言われた。
1791年 米国特許法の成立
1861〜4年 南北戦争 北部 工業 保護主義 リンカーン(発明家)
南部 農業 自由貿易
大恐慌(1929年)以来、独占禁止が強調され アンチパテント
1980年代 プロパテント に変更
1985年 レーガン大統領 G5で通貨政策を発表、翌日 プロパテント政策を発表
テキサスインスツルメンツが日韓の半導体メーカーを告発
以来、特許法/通商法の併せ技で巧みな戦略
・特許-----独占権-----国益 ハーモナイゼーションと相容れない。
司法の運用でうまく舵を取っていくのが米国、法律化せずあうんの呼吸の日本
秘密特許(国防などにからむ)が米国にある。
・米国のこれからの基本戦略
・金融にからむ情報システム
・世界の標準(米国式会計システム)
・全社員の意識改革が重要
秘密保持に電話利用は不可(盗聴器) 暗号化の重要性
外国出願の時、秘密書類は身につける
秘密保持の状況を専門会社にチェックしてもらう
ガラスの振動から情報が漏れることがある
企業秘密かどうか弁護士にチェックしてもらう