私が殺した少女         原  寮


早川書房

 探偵沢崎の元に真壁氏からの呼び出し。出かけて行くと「娘・・・清香は無事でしょうね。・・・金を仲間のところに運んだら一刻も早く娘を返してもらいたい。」そこに警官が踏み込んできて、主人公はあっさり誘拐犯に仕立てられてしまう。
 容疑は解けたものの、今度は誘拐犯からの指定で身代金を運ぶ役目。この辺警察とのメンツをかけた会話がうまく書けている。さんざんファーストフード店を回らされたあげく、暴走族らしい男達に因縁をつけられ、殴り倒され、気がついたら金の入ったジュラルミンのケースははなくなっていた。
 誘拐された清香は、天才的なヴァイオリニスト。叔父の甲斐教授から犯人らしい者のリストを渡され調査を開始する。なんとそれらは甲斐家の三人の息子と嘉村千秋なる甲斐氏の妾腹の女性。いづれも金に困っているが、さりとて犯人という様子ではない。調べて行くうちに事件に興味を示す真壁家の十二歳の慶彦は、実は甲斐家からの養子であることがわかる。
 数日後、名乗らぬ男から火災にあった老人ホームに呼び出され、出かけて行くと、排水溝のなかに清香の無惨な死体。暴走族らしい男も呼び出されており、あわてて逃げ出す。
 暴走族らしい男は捕まるが、誰に依頼された行為なのかはっきりしない。借金の状況から嘉村家を張り込んでいると痴呆症のおばあさんがあのジュラルミンケースを持ち出し、新宿で豪遊。沢崎の通報で、警察が嘉村家を捜査、千秋の父母に尋問するがケースはゴミ捨て場で拾ったと証言。
 清香の葬儀が終わった後、沢崎は真壁を訪問し、結論を暴露する。
「誘拐事件はなかった。お嬢さんは慶彦君と何か争って、事故死した。しかしあなたとしては甲斐氏から預かった慶彦君を悪者にするわけには行かない。それであんな架空の誘拐劇をでっち上げた。」

 読者が実際にその場にいるような雰囲気を与える丁寧な描写が目立つ。推敲をかさねた結果なのだろう、すばらしい。理論という点から見れば嘉村一家を見張った理由、最後の結論に至った理由の解説が少し弱いような気がする。しかし、レイモンド・チャンドラーのようなハードボイルドを目指しているのであり、謎解きは二の次なんだよ、と言われればそれはそれでいいのかも知れないとも思う。

・ニュースに喜怒哀楽の感情を盛り込むのはお国柄でもあるが、それだけニュースが新鮮でない証拠のようでもあった。欧米のテレビ・ニュースは感情など入れている暇はないと言うように早口でまくし立てる。(210P)