ハルキ文庫
「どこまでも殺されて」と同様の叙述トリック小説。
「さあ、あなたは私を殺したいんでしょう。その毒入りウイスキーを飲ませたいんでしょう。アリバイも用意してあげたわよ。。」一月も経って、お手伝いの太田道子は原宿のマンションで世界的ファッションモデルとして活躍中の美織レイ子が死んでいるのを発見した。
レイ子は田舎の女学生だったが、車にはねられ、顔を滅茶苦茶に破壊された。しかしひいた医者の計らいでアメリカで手術を受け、美人に再生され、ファッション界に入った。レイ子を殺す動機をもつのは、若社長沢森英二郎、モデル仲間池島理沙、女性デザイナー間垣貴美子、レコード会社デイレクター高木史子、カメラマン北川淳、稲木陽平、そして7人目は?。事件が発覚すると、不思議なことに皆が皆、自分がレイ子を憎み、グラスを入れ替えて、レイ子にその毒入りウイスキーを飲ませ殺した、と信じている。
こんな事が可能なのだろうか。私は、全部告白書がある意図の元に書かれインチキ、あるいはレイ子は7人いた、などと考えたものである。自殺説、次にはレイ子に恋し、地位と家庭を滅茶苦茶にされた笹森医師、さらに自分が殺した、との遺書を残して死んだ沢森と犯人像は次々変わるが、真実には近づかない。
しかしあの自動車事故を起こした浜野康彦医師は、レイ子のルーツを調べるうち、レイ子は二人いたのではないか、共犯者がいたのではないか、などと考え出す。一方浜崎医師の動きに気づいた共犯者は、容疑者の抹殺を実行し始める。 犯罪の目的が人を殺した、という意識を持たせる、という点が面白い。
こんな事はもちろん現実には考えられないし、小説として論理的欠陥もあるように思う。人に殺す気を起こさせて、実際にグラスを入れ替えるまで1時間30分なんてどうして推定がつく?殺された日を2日も間違える?あか抜けた美人の川田清子が手術で普通の顔の石上美子にしてもらったのに、どうして世界的ファッションモデルになれたの?エトセトラ、エトセトラ。しかし論理ゲームとして大変興味深い。
・ことに若者文化の台頭で、十代、二十代が購買層の大きな比重を占めるようになるとそう言った世代の感覚を敏感に察知する若手デザイナーが人気者としてもてはやされるのである。絹のプライドよりも木綿の大衆性が、パリのエレガンスよりニュウヨークの現代性が、オートクチュールよりも既製品がファッションの主流となってきた。(103p)
・馬鹿ね、今夜中に私を殺して、このテープをあしたの晩、九時にあなたの手で大下亮の留守番電話に録音すればいいじゃないの。そうしてあした一晩のアリバイを作っておけばいいのよ。(226p)
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