ホワイトアウト        真保 裕一


新潮文庫

作品冒頭で、これから起こる会津奥遠和発電所で起こる活劇のヒントになる事件が語られる。発電所にいる富樫と吉岡は十一月に雪の山道で遭難しているらしい二人を発見、一人を助けるが、吉岡は事故で死んでしまう。御殿場の火薬倉庫を五年前に過激派の爆弾テロで妻と子を失った男が襲おうとしている。羅臼沖でレポ仲間の密告問題で男たちが殺し会いをしようとしている。吉岡の婚約者平川千晶が、冬の奥遠和に行こうと決心する。
富樫等は、冬の山で千晶を迎えるが、途中で何者かに襲われ、気がつくと同僚は殺され、千晶は連れ去られ、富樫は谷の中。近くのレストハウスに行くとまた襲われ、同僚が死ぬ。一方発電所には千晶をつれた過激派が侵入、保安要員を縛り上げ「赤い月」が占拠した、と宣言する。そして地元警察に50億要求すると共に、ダムの一斉放水を始める。
しかし発電所近くに戻り事態を知った富樫は、開閉所に忍び込み、二人を殺すと共にバルブを破壊し、放水を止めてしまう。事態の発覚を怖れた「赤い月」は開閉所入口をふさぎ、富樫を閉じこめようとするが、富樫は蓋道(放流菅)から抜けだし、下流の大白ダムにたどりつく。電話で対策本部に連絡、仲間は5、6人など詳細な情報を伝える。スイスへの送金、脱出のためのヘリの用意までしていた本部は喜ぶ。
この後、通常なら山を下りるところ、富樫はかって吉岡を見殺しにしたこともあって、千晶救出と発電所奪還のため、冬の山に戻る。そのころ「赤い月」では、彼らの隊長ウツギが、消えてしまった。残った戸塚、笠原等は千晶の証言で、ウツギが仲間を裏切って脱出したと確信、後を追う。そして暗い氷上でのスノーモービルを使ったウツギ、追っ手、富樫の三つどもえのバトル。この過程で、事件は爆弾テロで妻子を失った男笠原が「赤い月」の残党に近づき、起こしたものであることが分かる。笠原はウツギに、追っ手は富樫に倒されるが、ウツギは仲間と逃げ出す。後を富樫が追う。そして雪崩・・・。

読み始めたとき「あ、過激派によるダムの占拠か、考えそうなことだ。」と思った。しかし読後、今まで読んだ冒険小説の中でも特に素晴らしいものと感じた。
素晴らしさはなんと言っても主人公のまっすぐな行動形態にある。過去に自分の過失で友人を死なせてしまった男が、再び襲った新たな試練に、己の生命を省みず果敢に立ち向かって行く、その真摯な行動スタイルにあると思った。成功の第二の要因は詳しい調査に基づいたデイテール描写と緊迫感のあふれる語り口である。最後の方はページを追うのももどかしく、大作にもかかわらずどんどん読み進んでしまった。

・カーリットの主剤・・・・過塩素酸アンモニウム、硝酸アンモニウム(292p)

(参考)私の日記から   

2000年8月26日 晴れ

残暑が厳しい。午後、ガールフレンドの***と新宿の映画館に「ホワイトアウト」を見にゆく。人気作品らしく、30分前についたがかなり長い列ができていた。若い女性客が多い。「織田祐二が目当てなんだよ。」と言ったら「松嶋菜々子が好きで来た人だっているわよ。」と***。

和製活劇もここまで来たか、と言うくらい迫力がある。織田祐二が好演しており、素晴らしいエンタテイメント作品だ。比較的原作に忠実に作られていると思う。ただ主人公の富樫が再び発電所に戻る理由、最後にウツギ、追っ手、富樫の三つどもえのバトルが展開され、次々に死者が出るのだがその過程が今一歩わかりにくいように思った。

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