新潮文庫
子供の時、事故で妹のりつ子の指をつめてしまった世良祐介は負い目を持っている。そんなりつ子に、遊び人デイレクターで羽山容子を愛人に持つ小田隆志が目をつけた。話しをつけてやろうと三人で話しているうちに、小田のモデルガンだと銃を見せた。ところがそれをいたずらしていたりつ子が誤って発射、弾は小田を貫き、即死させてしまった。本物の銃だったのだ。
祐介は、りつ子に頼まれて、銃を捨てに山梨方面に行くが道に迷ったあげく、車を木にぶつけて大破させてしまった。困っていると、通りかかった近くのペンションこぐまの畑中亜美に助けられ、そのペンションに行く。ペンションは、亜美と父の畑中秀治と二人暮らしで、秀治が経営しているが、彼は酒浸りの毎日を送っている。秀治は、かって高校教師と関係し、村に来てからも地主の息子を誘惑した娘を信用していない。祐介にも娘のスキャンダルを書こうとしている雑誌記者か何かではないかと、疑いの目を向ける。そしてねちねちと質問。あの男は狂っている!ところが祐介が、翌朝出発しようとすると、当たりは一面の雪、閉じこめられてしまった。
その上秀治は、祐介が財布を忘れて来たことに気がつくと、今度は出て行くな、と無茶な命令。そのうちにテレビでりつ子の自殺と祐介が小田殺しの容疑者であることが放映される。やっぱりおれがやつはどこか胡散臭いと感じた通りだ、と秀治。祐介は、亜美とは次第に心が通じ、彼女の助けでなんとか脱出しようと試みるが、それも失敗、ついに地下室に閉じこめられてしまった。食事が与えられるだけの日々。寒さが襲い、地下室は糞にまみれる!
雪が止んで、道路も開通した頃、やっと亜美が地下室の鍵を見つけてくれた。しかし這い出たのもつかの間、石油をかぶり、斧を片手に、阿修羅と化した秀治がせまってくる。
まさに「ミザリー」の世界。しかし状況設定が巧みな上に、登場人物と状況を繊細に描くことによって、読者を次第に不条理なまさに「闇の世界」へと追いつめて行く。それがじわじわと恐怖に変わって行くために読者は読む手を休めることができない。まさに心理サスペンスの典型的な作品である。
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