蒼ざめた告発  夏樹 静子 (短編集)

集英社文庫

 女の生き方、行動形態をいろいろな角度で切り取って見せた短編集。

 冷やかな情死

 スナックバーに勤める美紀は、放火現場から飛び出してきた女の子なおみを助けた縁で、妻子ある弁護士架山の愛人になる。その架山が、事務所で何者かに殺され、現場に美紀のハンカチが落ちていたことから、美紀に疑いがかかる。誰かが、美紀に罪をなすりつけようとしている!ついに架山の妻の告白から犯人を知った。架山を愛した美紀の、命をかけた復讐が始まる。

 蒼ざめた告発
 
ただ一度だけあやまちを犯した夫の友人宮野が路上で殺された。夫の行きつけのバーの女が絞殺された。あの日帰った夫は朝着ていったレインコートを忘れて来たし、シャツには血がついていた。犯人は夫か。ところがバーの女を殺した暴力団員田岡が逮捕された、との報道。そして夫は「君と宮野の関係は知っていた。あの日口論になり、君を汚した宮野を許せなかった。」ああ、夫はこんなに私のことを思ってくれる!私は、夫を刑事から絶対に守ろうと決意した。しかし刑事から「バーの女には睡眠薬を飲まされた跡があった。普段飲んでいる胃薬のカプセルの中に青酸カリ入りのものがあった。女の体からご主人のザーメンが発見された。」と聞いて私は・・・・。

 二粒の火
 
わがままだったが、高倉建設の社長夫人におさまった高倉京子から、夫の浮気調査を頼まれた。浮気相手は京子と同窓の雪江、ところが高倉の別荘が火事になり、焼け跡から京子の死体が黒こげ見つかった。調査で、高倉建設は倒産寸前、ところが京子がもらったものと別荘を手放そうとせず夫婦間でもめていたことがわかった。そうなると夫の高倉が怪しいが、出火当時完全なアリバイがあった。しかし線香たてにたてた蚊取り線香の両端に火をつけると、一方が燃え尽きると片方が火のついたままぽとりと落ちる。もしそこに油のしみた新聞紙でもおいてあったとしたら・・・・。(遅動発火装置)

 男運

 万木蓉子は前夫がガス中毒死し、寺島画伯の愛人になっていた。ところが数日前画伯が何者かに撲殺された。藪原弁護士は「結構な額の遺産は遺児にゆき彼女には一銭もこない、何とかならないか。」との相談を受けた。何ともならぬと答えて、約3ヶ月後、藪原は蓉子が若い男と一緒のところを見つけた。そしてその若い男水野を殺害した容疑で、蓉子が逮捕されたとの報道。真実の愛を求めて次々男を殺していった蓉子、彼女はやはり男運が悪かったのだろうか。

 お話中殺人事件 
 
私は荻野純子が電車にひかれそうになった現場を目撃し、彼女から「私も義理の姉の佳乃も最近誰かにねらわれている、助けてほしい。」と頼まれる。私が純子と佳乃をはっていると知り合いの磯部らしい男から電話。わずかの時間現場をはずれ、戻ると彼女はストッキングで絞殺されていた。磯部があやしいが、佳乃の家と磯部のアパートは遠く離れており、磯部には鉄壁のアリバイ。しかし私は刑事の会話から、現場の電話が、佳乃から磯部にかけた状態になっていることに気がついた!血の繋がりのない姉を殺して財産を相続しようと、妹が恋人と共同でおこした事件で、 電話機が掛けたほうの状態でお話中になることに目をつけた犯行時のアリバイトリックが面白い。

 見知らぬ敵
 
情事の現場を押さえられた菅伸一郎は、交換殺人を強要される。「俺はあななに財産が入るようにおまえのカミさんを殺してやるから、かわりに兄の社長を殺してくれ。」菅は仕方なく指示通り社長を殺すが、相手が殺そうと密かにねらっていたのはカミさんではなく、菅自身だった。しかし菅が殺されるところをカミさんが目撃していて・・・・。 


 死者からの電話。
 
私立探偵社に勤め、2ヶ月前に墜落死した姉から私の元に電話「あれは事故死じゃないの、他殺よ。私が調査をしていた須崎三千夫という男を調べてちょうだい。」須崎には蕗子という愛人がいた。姉は須崎の妻の依頼で調査をしていたが、その後蕗子のもとに通っていたことが確認された。姉は業務外で蕗子を強請っており、三千夫と蕗子に逆に殺されたのでは無いか? しかし犯人は意外なところにいた。「結婚して家庭の妻の座にすわるということは、見方によっては、愛する人から一番遠い存在になることじゃないか。」という疑問に答えた作品。妻は一度だけでいいから、夫と命がけの大事をやってみたかった。ついでに夫の犯罪を露見させ、破滅させ家庭という檻から出たかった・・・。

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