ぼくらの時代    栗本 薫

講談社ハードカバー

ぼく栗本薫。22才。某マンモス至大の3年生で仲間ふたりとロック・バンド「ポーの一族」を結成している。3人で人気歌手あい光彦主演の「ドレミファ・ベストテン」を収録しているとき、あいに殺到したファンの一人で高校生の佐藤尚美が倒れた。背にはナイフが刺さっていた。原田デイレクター、飯島マネージャー、自分たち、あるいはあい光彦などが疑われるが証拠もなく事件は膠着状態。
そん中佐藤尚美の友人島田恵子が「東京第三分暑」の控え室で道具の下から頭部に打撃を受けて死体となって見つかった。さらに友人土屋光代の失踪。
そしてぼくらの仲間の長髪の榎本が貸しスタジオで射殺される。貸しスタジオの主、今井は元軍人だった。そしてその娘厚子が失踪していた。
捜査の進展と共に飯島が暴力団と繋がっていたこと、そして女高生達をタレントに近づけると誘惑し、売春を強要していたことが分かった。
女高生達は純粋だった。彼女たちはいつかあい光彦と結婚することを夢見ていた。そして飯島にだまされ、汚された、飯島の犯行に見せかけた自殺を企てたのだった。佐藤尚美はナイフを自分の椅子にセットした。島田恵子は飛び降り自殺だったが殺人に見せかけるため、僕らが楽屋裏に運んだ。失踪した二人もどこかで自殺した事だろう。榎本は娘の蒸発に「長髪のイマヨウ若者がにくい。」に凝り固まった今井に撃たれたのだった。

新鮮なイキのよい書きぶりである。会話主体だが、プロフェッショナルな言葉が飛び交い雰囲気を良く出している。アイドルに熱狂する少女達とぼくたち、それに新旧世代の考え方の違いの様なものを書きたかったのだろうか。

・スタジオ殺人の謎(242p)
(1)榎本がドアを背にしてたった途端今井がが撃った。弾はドアのガラスに半分めりこんでとまった。
(2)榎本はドアをうしろ手にしめ、夢中で鍵をかけた。
(3)今井はとどめをさすつもりでドアを引っ張った。榎本はドアに背を持たせ、取っ手を必死で抑えた。
(4)榎本はそこまでで力つきて、ずるずるすべりおちて息絶えた。
(5)今井は取手の指紋だの血痕だのを始末して榎本が室内で死んだ状況を作り上げた。
・小説を1人称で書くか3人称で書くかの議論も面白い(62p)