角川文庫
刑務所で知り合った若い3人組は、5000万円の身代金をあてこんで紀州柳川家の82才になる、大金持ちで、人徳豊かなお婆さんを誘拐しようとする。
丁度その頃お婆さんはどうも自分が癌らしいと気ずき、せめて死ぬ前に広大な自分の山林をみておこうと、ハイキングを日課に始める。このため、偵察などにいろいろ苦労した3人であったが、見事にお婆さんを誘拐する。
ところがお婆さんは「身の代金が5000万円、馬鹿にするな、100億円だ。」そのうえ、お婆さんを隠すところがアパートではばれやすい、とおばあさんの元の女中の家に変更するが、山の中の1軒家。お婆さんの元気は犯人側の巧妙なトリックの中、テレビ放送で中継される。出てきたお婆さんは「100億円は財産を処分すればなんとかできるだろう。」と子供達にその処分方法まで教える。
そしてヘリコプターで紀伊半島をぐるぐる回った上での100億円の受け渡し、霧の中への犯人の消滅。
「余命が少ないと知った時、国が私になにをしたと考えた。戦争で息子や娘を奪い、そのうえ今は相続で財産を奪おうとしている。さらに今の2世3世は危機意識がない。柳川家から出る金は100億円だが、身の代金は費用で落とせるから実質は30億円強、まあ、いいだろう。国への報復と子供達の自覚をうながすために、博打をうってみよう。」
とお婆さんは考えたのだ。
3人の犯人は結局お婆さんの人柄にうたれ、柳川家で農業などで出直すことに、現金100億円は新しく作った持仏堂の台の部分に入れることに・・・。
誘拐を種にした喜劇仕立てである。軽妙な文章と良く考えられたトリックで非常におもしろくできている。